犬の前庭疾患という病気を知っていますか。前庭疾患というワードは耳にしたことがあっても、その症状や治療法はよくわからないという飼い主の方が多いかもしれません。今回は犬の前庭疾患をテーマに、重度の場合の対処法や、重症化を防ぐポイントについて、詳しく解説を加えました。動物病院を受診する目安などもお伝えするので、万が一のときに慌てないためにも、ぜひ参考にしてください。
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犬の前庭疾患とは

初めに、犬の前庭疾患とはどのような病気なのか、概要を押さえましょう。前庭疾患にかかりやすい犬の特徴や、重度の場合に現れる症状などについて理解を深めておくと、早期発見につながるかもしれません。
- 犬の前庭疾患とはどのような病気ですか?
- 犬の前庭疾患とは、平衡感覚をつかさどる前庭と呼ばれる部分が正常に働かなくなり、さまざまな神経症状が起こる病気のことです。突然発症するケースがほとんどで、目立った前兆はほぼないものの、元気がない、食欲がない、呼吸が荒い、よだれがひどい、嘔吐するといった前触れが見られることもあります。前庭疾患にかかったときに一番現れやすいのは、眼球が横一定方向に連続して揺れる眼振の症状です。その他にも、頭が傾いたままになる捻転斜頸(ねんてんしゃけい)や、同じ方向にグルグルと回って歩く旋回などの症状が出ます。
- 前庭疾患の原因は何ですか?
- 犬の前庭疾患には、外耳炎や中耳炎の悪化、脳の問題、外傷、薬物による中毒、甲状腺ホルモンの異常など、さまざまな原因があります。同時に特発性といって、原因がわからないケースも少なくありません。数時間前までは元気にしていたのに、突如として症状が出始めることもめずらしくないため、飼い主も慌ててしまうでしょう。
- 前庭疾患にかかりやすい犬の特徴を教えてください
- 前庭疾患は年齢や犬種を問わず発症する恐れのある病気ですが、高齢の犬、特に柴犬や柴犬ミックスがかかりやすいとされています。
- 重度の場合はどのような症状が見られますか?
- 犬の前庭疾患が重度になると、顔が傾きすぎて転んでしまうといった症状が見られます。
犬の前庭疾患の治療法
前述のとおり、犬の前庭疾患にはさまざまな原因があります。そうなると、気になるのはどのような検査や治療が行われるのかという点です。家庭内で行うべきケアについても、あわせて理解を深めましょう。
- 治療を進めるにあたってどのような検査を行いますか?
- まずは、前庭疾患の原因を特定するために、血液検査、神経学的検査、歩行検査、耳鏡検査、MRI検査、CT検査などを行います。一方、検査の際にかける全身麻酔のリスクを考慮して、あえて原因を特定しない場合もあります。
- 原因ごとの治療法を教えてください
- 原因ごとに治療の可否や難易度は異なりますが、ほとんどの場合は投薬治療が行われます。また、前庭疾患の原因が腫瘍である場合には、手術などの外科的処置が必要となる可能性もあるでしょう。腫瘍の場所によっては手術が困難なため、獣医師とよく相談したうえで治療法を選択してください。原因がわからない特発性前庭疾患の場合には、明確な治療法がありません。症状に合わせて対症療法を行い、自然回復を待つことになります。治療しなくても、症状が消えるケースも見られます。このように、前庭疾患の経過は一様ではありません。
- 重度の場合は治療を受けても後遺症が残りますか?
- 重度の前庭疾患の場合は、治療を受けても回復までに時間がかかったり、後遺症が残ったりすることが考えられます。日常生活に大きな支障が出たり、介護が必要になったりする可能性もあるでしょう。
- 治療とあわせて家庭内で行うべきケアを教えてください
- 前庭疾患を発症するとまっすぐ歩けなくなるだけでなく、同じ方向にグルグルと回って歩く旋回などの症状も現れます。平衡感覚が乱れて、フラフラと倒れこんでしまう犬もいるでしょう。そのような状態で家庭内を動き回ると、怪我のリスクが高まります。歩く範囲を狭める、階段から落ちないようにゲートを付けるなどの配慮により、犬が危険な状態に陥らないようにしてください。ぶつかりそうなものをあらかじめ片付けておくことや、家具などの角をカバーしておくことも重要です。また、症状を悪化させないためにも、頭の位置がいきなり変わるような抱っこの仕方は避けましょう。方向転換がゆっくりでないと、眼振がひどくなるかもしれません。犬がうずくまり、身動きが取れなくなってしまったら、寝かせ方も工夫してやります。同じ側を下にして長時間寝ると床ずれになりやすいので、こまめに体位を変えたり、厚めのベッドに寝かせたりしてあげましょう。なお、マッサージなどのケアは獣医師に相談したうえで行ってください。
重症化を防ぐポイント

犬が前庭疾患にかかるとさまざまな症状が現れて、場合によっては日常生活にまで影響がおよびますが、重症化を防ぐポイントはあるのでしょうか。動物病院を受診する目安もまとめるので、参考にしてください。
- 犬の前庭疾患を予防することはできますか?
- 残念ながら、犬の前庭疾患は突発的に発症するため、明確な予防方法はありません。外耳炎の悪化が原因となりえることから、慢性的な外耳炎の治療を徹底するなどの対応を取りましょう。
- 重症化を防ぐポイントを教えてください
- 前庭疾患が疑われるような症状が見られたら、少しでも早く動物病院を受診することが、重症化を防ぐポイントです。検査の結果、前庭疾患ではなかったとしても、ほかの思わぬ病気が潜んでいる可能性もあるので、自己判断で経過を見るようなことは避けて、獣医師の判断を仰ぎましょう。前庭疾患の症状はいきなり現れるため、あらかじめ夜間対応の動物病院を見付けておくことも大切です。なお、前庭疾患の検査には数万円の費用がかかるかもしれません。そうした点も念頭に置いて、万が一のタイミングに備えてください。
- どのような症状が見られたら動物病院の受診を急ぐべきですか?
- 前庭疾患にかかると、さまざまな症状がいきなり現れるケースが多いので、飼い主もどのように対処すればよいかわからず、慌ててしまいがちですが、眼球が揺れている、嘔吐がひどい、起き上がれないといった状態であれば、特に動物病院の受診を急ぐべきです。そのまま放置してしまうと、回復までに時間がかかったり、回復後も後遺症が残ったりする恐れがあります。なお、眼振が縦揺れの場合には中枢性が疑われ、脳炎や脳腫瘍、脳梗塞の可能性があります。いずれにしろ、医師の判断を仰ぐことが重要です。犬の前庭疾患については、無治療であっても徐々に回復するケースや、急激にひどい症状が現れても数週間程で回復するケースなども見られますが、侮ってはいけません。
編集部まとめ
犬の前庭疾患は平衡感覚をつかさどる前庭が正常に働かなくなり、さまざまな神経症状が起こる病気です。原因は一つではないため、状況に応じてさまざまな治療が行われますが、いずれの場合も早期に動物病院を受診することが、重症化を防ぐポイントとなります。治療とあわせて、家庭内でケアを行うことも欠かせません。平衡感覚が乱れた愛犬が怪我を負うことなく過ごせる生活環境を整えてやり、その負担を少しでも軽減できるように努めましょう。
【参考文献】
