犬の熱中症対策とは?症状と原因、治療法についても解説

犬の熱中症対策とは?症状と原因、治療法についても解説

熱中症は、高温多湿の環境で体温調節がうまくできなくなり、脱水症状がひどくなって起こります。ふらつきや嘔吐などの症状が現れ、重症化すると命にかかわるものですが、人間だけでなく犬も熱中症になることがあります。ここでは犬の熱中症の症状がどういったものか、どういった環境で熱中症になりやすいのか、また熱中症になりやすい犬種はあるのか、さらにその原因や治療法、飼い主にできる応急処置についても解説していきます。

犬の熱中症とは

犬の熱中症とは

犬も人間と同じように熱中症になることがあります。犬にとっての適温は25℃前後と人間よりもやや低いため、より暑さには注意しなければなりません。ここでは犬も熱中症になるのかどうか、また、熱中症になった場合の原因についてまとめました。

犬も熱中症になりますか?
犬も熱中症になることがあります。熱中症は、高温多湿の環境の中に長時間いることで体温調節がうまく出来ず体温が上昇し、脱水状態になることから起こる全身の疾患です。犬の平熱は38℃前後で人間よりも高いのですが、42℃を超えると多臓器不全になり命にもかかわります。熱中症にかかった犬の致死率は36~50%と高く、時間が経つほど悪化するのでできるだけ早く対処することが重要です。対処が遅れてしまうと、命を取り留めることができても内臓や脳の機能障害などの後遺症につながります。
犬が熱中症になる原因について教えてください。
犬が熱中症になる原因としては、高温多湿の環境や激しい運動、持病などが考えられます。高温多湿の環境は炎天下の屋外だけでなく室内でも注意が必要です。犬は人間のように全身で汗をかくことはなく、鼻先や耳の中、足の裏といった部分でしか汗をかきません。体温調節時には口を大きく開けてハアハアと呼吸して熱を逃がします。このときに室内の湿度が高すぎるとうまく放熱できず、熱中症のリスクが高くなるのです。また循環器疾患や呼吸器疾患など心臓や呼吸器の病気があると熱中症になりやすくなります。

犬の熱中症の症状

犬も人間と同じように熱中症になります。では、ふらつきや嘔吐など以外にどのような症状が出るのでしょうか。さらに症状が進んで重症化するとどうなるのか、また熱中症になりやすい犬種があるのかについてもまとめました。

犬が熱中症になると、どのような症状が出ますか?
犬はパンティングといって体の熱を逃がすために口を大きく開けてハアハアと呼吸をしますが、熱中症になるとこの呼吸が普段よりも激しく速くなります。そのほかによだれが多くなる、歯肉や舌、結膜などの粘膜の充血やうっ血、頻脈などが見られます。特にCRT(キャピラリテスト)が1秒未満の場合は熱中症のリスクが高くなります。

CRT(キャピラリテスト)とは、毛細血管再充満時間テストといって、犬の歯肉部分を指で押したときに白くなった部分が再度赤くなるまでの時間を測定するテストです。通常は2秒ほどで血液が戻ってきますが、犬の体温が上がっていると血液が戻ってくるまでの時間が1秒未満になります。
犬の熱中症が重症化するとどうなりますか?
熱中症が重症化してくるとぐったりとして意識がなくなる(虚脱状態)、嘔吐や下痢、ふるえ、けいれん発作、ARDS(急性呼吸促迫症候群)状態による呼吸不全による頻呼吸や呼吸困難、チアノーゼなどの症状が見られます。さらに熱中症の症状が出てから対処するまでの時間が90分以上かかった場合は、急性の播種(はしゅ)性血管内凝固症候群(DIC)になってしまい、血管内に小さな血栓が多く生じて死に至る危険が高まります。熱中症は時間が経つほど悪化してしまうので熱中症が疑われたら早急に対処することが重要です。
熱中症になりやすい犬種はありますか?
熱中症になりやすい犬種は、パグ、フレンチ・ブルドッグ、ブルドッグ、シーズーなどの鼻の低い短頭種です。犬の目元から鼻先・口の部分であるマズルが短く気道が狭いために、熱い外気を取り込みやすく、熱を逃がすためのパンティングの効率も悪くなり熱中症になりやすいようです。また肥満犬は脂肪によって気管が圧迫され呼吸がしづらくなるため体温調節が苦手です。皮下脂肪も多いため体内の熱が外に逃れにくく体温が上昇しやすくなるので気をつけなければなりません。そのほかにも循環器疾患や呼吸器疾患など心臓や呼吸器の病気があったり、認知症を患っていて水を飲む場所を認識できずに水分補給ができなかったりすると、熱中症のリスクが高まります。

犬の熱中症対策

犬の熱中症対策

犬の熱中症には屋外・室内それぞれに対策があります。ここでは犬が熱中症になりやすい環境はどのような環境なのか、犬が熱中症にならないための対策についてまとめました。

犬が熱中症になりやすい環境は、どのような環境ですか?
炎天下や高温多湿の環境では熱中症になりやすくなります。夏場の散歩などは時間をずらして行うほうがいいでしょう。また外飼いの場合はコンクリートやアスファルトの上に犬小屋がある、犬小屋の通気性が悪い、直射日光などで飲み水が熱くなっているといった環境下では熱中症のリスクが高くなります。可能であれば室内の涼しい所に入れてあげるといいかもしれません。

また屋外だけでなく室内でも注意が必要です。窓を閉め切った状態で室内の温度や湿度が高すぎると体温調節がうまく出来ずに熱中症になりやすくなります。また窓を開けていても風が弱いと気温が高くなるので気をつけたほうがいいでしょう。
犬が熱中症にならないための対策を教えてください。
犬が熱中症にならないための対策は、屋外・室内それぞれにあります。

屋外では、散歩はできるだけ早朝など涼しい時間帯に行い、アスファルトなどの路面温度が高くないか確認しましょう。暑い時期の外出時には冷却グッズを使い、こまめに給水します。室内では、湿度を60%以下に維持し、適切な温度(25℃前後)を保ちましょう。ただし、設定温度と体感温度の差や、風の流れの有無によって、犬の熱中症は簡単に起こりやすくなってしまいます。設定を守るだけでなく、犬の様子をよく見て、適切な環境を整えることが大切です。

飲み水はこぼすこともあるので、複数箇所に新鮮な水を置いておくようにしましょう。留守番時にもエアコンを利用し、エアコンのリモコンは触れない場所に置くよう注意が必要です。また、停電時に備えて電気を利用しない安全な冷却グッズを併用すると安心です。そのほかに、こまめにブラッシングを行い被毛の通気を良くするのも効果的です。なお、犬の被毛は直射日光や寄生虫から皮膚を守るなどの役割があるので、サマーカットをする場合は刈りすぎないようにしてください。

犬の熱中症の治療について

熱中症になった犬の致死率は36~50%と高く、できるだけ早く対処することが重要です。ここでは飼い主にできる応急処置はあるのか、動物病院を受診すべき症状や、動物病院で受ける治療やその費用についてまとめました。

犬が熱中症になったら、飼い主ができる応急処置はありますか?
熱中症の疑いがある場合は、病院に連れていく前にできるだけ早い対処が必要になります。まず日陰を見つけて涼しい場所に移動させましょう。そして濡れタオルや水で地肌を濡らし、風を当てて気化熱で体温を下げます。犬は全身では汗をかかないので地肌を濡らすことがポイントになります。被毛を濡らしただけでは体温はなかなか下がりません。

すぐに氷を準備できるなら、氷と水をビニール袋などに入れ氷のうを作り、頭、首筋、脇の下、お腹、内ももなど太い血管がある場所を冷やします。ただし、急激に冷やしすぎると表面の血管が収縮して熱をうまく逃がすことができなくなるので注意してください。氷のうの下に1枚タオルを当てるといいでしょう。
犬が熱中症になったときに動物病院を受診すべき症状を教えてください。
いつもよりパンティングが激しい、よだれが多い、歯肉や結膜など粘膜の充血やうっ血、頻脈などの熱中症の初期症状が見られた場合は一刻も早く対処する必要があります。すぐ症状が落ち着くようであれば緊急性は低いかもしれませんが、内臓にダメージが残る場合もあるので応急処置をした後に動物病院に相談してみてください。意識がなくぐったりしている、嘔吐や下痢、けいれん発作を起こしている場合は熱中症の症状が重症化していることが考えられます。なるべく早く受診しましょう。
犬が熱中症になったときに動物病院で受ける治療方法と費用を教えてください。
動物病院での主な熱中症治療は、体温管理をして脱水症状やショック状態のための点滴を行い、意識レベルが低かったり呼吸状態に問題があったりする場合は酸素投与を行います。また画像診断や血液検査、糖分(デキストロース)の投与や脳炎を防ぐためのステロイド剤の投与を行うこともあります。

 費用は診察料のほかに検査料や治療費などがかかり、輸液の種類や量により金額も異なりますが、通常2~3万円程度かかるようです。受診する動物病院によっても違いがあるので受診時に確認してみてください。

編集部まとめ

編集部まとめ

犬の熱中症の致死率は高いのですが、事前に対策をすることで防げる病気でもあります。室内では温度や湿度の管理に配慮してエアコンや冷却グッズも併用したり、屋外では、散歩はなるべく暑い時間帯を避け、こまめに給水したりといった対策をとって、熱中症にならないようにしっかりと気をつけてあげましょう。熱中症は時間が経つほど悪化します。もし症状がある場合は応急処置を行い、必要であれば動物病院を受診してください。

参考文献