犬の尿失禁はなぜ起こる?原因や動物病院での検査・治療、自宅でのケアを解説

犬の尿失禁はなぜ起こる?原因や動物病院での検査・治療、自宅でのケアを解説

愛犬が寝ている場所を濡らしてしまう、知らないうちに尿がもれているといった様子に戸惑う飼い主さんは少なくありません。尿失禁にはさまざまな原因があり、治療によって改善が見込めるものもあります。まずは原因を確かめることが大切です。この記事では、犬の尿失禁の原因や検査と治療、自宅でのケアと受診の目安について解説します。

犬の尿失禁の主な原因

犬の尿失禁の主な原因

尿失禁の背景には、さまざまな要因が関わっています。ここでは、考えられる原因について解説します。

犬の尿失禁が起きる原因を教えてください
尿失禁とは、意識せずに尿がもれてしまう状態を指します。眠っているあいだに寝床が濡れている、歩いたあとに点々と跡が残るといった形で気づくことが多いものです。
原因はさまざまで、尿道を締める筋肉のはたらきが弱まっている、脊髄の病気や事故によって神経が傷つき排尿を調整できなくなっているなどが挙げられます。生まれつき尿管の位置に異常がある場合も知られており、若い犬にみられる原因のひとつです。
また、一見、尿失禁のように見えても厳密にいえば尿失禁とは違う病態であるケースもあります。例えば、腎臓の病気や糖尿病により尿の量が増える多尿の状態になり、あふれてしまうことがあります。また、膀胱炎や結石によって刺激を受けることで、少量の排尿を何度も繰り返す頻尿の症状や、痛みや力みが伴う排尿困難の症状が出ることもあります。
避妊手術の後に起こることはありますか?
はい、比較的よくみられる原因のひとつです。避妊手術を受けた雌犬では、女性ホルモンの減少によって尿道を締める筋肉のはたらきが弱まることがあります。ホルモン反応性尿失禁と呼ばれる状態です。
手術から数か月後にあらわれる場合もあれば、数年たってから気づく場合もあります。とくに体格の大きな犬種で起こりやすいとされています。眠っているあいだにもれることが多く、本人は気づいていません。薬による治療で改善が期待できるため、動物病院に相談してみてください。
高齢であることや認知症が原因で起こることはありますか?
年齢を重ねると、筋肉のはたらきが衰えて尿をためにくくなります。膀胱の柔軟性が落ちることも関わってきます。加齢による変化として、少しずつあらわれてくることが多いものです。
また、認知機能の低下によって、トイレの場所が分からなくなることもあります。この場合は厳密には失禁と異なり、排泄の失敗として区別されます。夜鳴きや徘徊、昼夜の逆転といった変化をともなうこともあります。どちらであるかによって対応が変わるため、様子をくわしく伝えてください。動画を撮っておくと、判断の助けになります。
医学的な原因以外でも起きる場合はありますか?
はい、環境や気持ちの変化が関わることもあります。強い緊張や恐怖を感じたときに、尿がもれてしまう犬もいます。来客や大きな音、叱られたときなどが引き金になります。
子犬では、興奮したときやうれしいときにもれることもみられます。多くは成長とともに落ち着いていきます。また、留守番の時間が長い、トイレが汚れているといった環境の問題が背景にある場合もあります。ただし、原因を自己判断で決めつけないことが大切です。まずは病気がないかを確かめてもらいましょう。緊張が原因の場合も、叱ることは逆効果になります。

犬の尿失禁で行われる検査と治療方法

 動物病院では、原因に応じた対応がとられます。ここでは、検査と治療の内容をみていきます。

尿失禁の診断ではどのような検査を行いますか?
まず問診で、いつから、どのような状況でもれるのかを確かめられます。眠っているときなのか、起きているときなのか、量はどのくらいかといった情報が手がかりになります。避妊手術の有無や時期も、大切な情報です。
検査としては、尿検査が基本になります。細菌や結晶の有無、尿の濃さなどを調べます。あわせて血液検査で、腎臓や糖尿病の状態を確かめます。必要に応じて、レントゲンや超音波検査で膀胱や尿道、結石の有無を見ていきます。神経の病気が疑われる場合は、専門的な検査が加わることもあります。原因を絞り込むことで、適した治療につながります。
薬による治療ではどのような効果が期待できるか教えてください
避妊手術後のホルモン反応性尿失禁であれば、薬による治療で高い効果が期待できます。尿道括約筋を収縮させる薬が用いられ、多くの犬でもれる回数が減っていきます。エストロゲンというホルモンを補う薬が選ばれることもあります。
膀胱炎が原因であれば、抗生物質や消炎剤によって炎症を抑えます。原因が取り除かれれば、症状も落ち着いていきます。薬は続けて飲む必要があることも多く、自己判断でやめないことが大切です。副作用が心配な場合は、その点も相談してみてください。定期的に状態を確認しながら、量を調整していく流れになります。
手術が必要になるのはどのような場合ですか?
結石が尿道をふさいでいる場合や、大きな結石が膀胱にある場合は、取り除く手術が検討されます。生まれつき尿管の位置に異常がある場合も、手術による対応が選ばれます。
また、薬を使っても改善がみられないホルモン反応性尿失禁では、尿道を支える処置が行われることもあります。手術が必要かどうかは、検査の結果をもとに判断されます。年齢や全身の状態も踏まえて、方針が話し合われます。負担が気になるときは、遠慮なく尋ねてみましょう。手術以外の方法があるかどうかも、あわせて確かめられます。
治療によってどの程度尿失禁が改善するのか教えてください
原因によって変わってきます。ホルモン反応性尿失禁では、薬によって多くの犬で症状が軽くなると報告されています。完全にもれなくなる場合もあれば、回数が減る程度にとどまる場合もあります。
膀胱炎や結石が原因であれば、それを治すことで改善が見込めます。一方、神経の病気や加齢による変化では、完全な回復がむずかしいこともあります。その場合は、症状とうまく付き合っていく方向で進めていきます。どこまで改善が見込めるかは、診察の際に確かめておきたいところです。

犬の尿失禁があるときの自宅でのケアと受診の目安

犬の尿失禁があるときの自宅でのケアと受診の目安

日ごろのケアによって、負担をやわらげられます。ここでは、自宅での対応と受診の目安について解説します。

水を飲む量を減らしたほうがよいですか?
水を制限することは避けてください。もれる量を減らしたい気持ちは分かりますが、脱水を招いて腎臓に負担をかけてしまいます。膀胱炎がある場合は、尿が濃くなって症状が悪化することもあります。
むしろ、いつでも新鮮な水を飲めるようにしておくことが大切です。飲む量が急に増えている場合は、腎臓の病気や糖尿病が隠れていることもあります。1日にどのくらい飲んでいるかを測っておくと、診察のときに役立ちます。気になるときは、動物病院で相談してみてください。水飲み場を増やすなど、飲みやすい環境をととのえることも役立ちます。
おむつや吸水シーツはどのように使うとよいか教えてください
犬用のおむつやマナーベルトは、寝床や室内を汚さないために役立ちます。長時間つけたままにすると蒸れて尿やけ(尿性皮膚炎)するため、こまめに交換することが欠かせません。濡れたら早めに取り替えてください。
寝床には、吸水シーツや洗えるパッドを敷いておくと管理しやすくなります。重ねて敷いておけば、汚れた分だけ取り除けます。おむつを嫌がる犬もいるため、無理につけず様子を見ながら進めましょう。サイズが合っていないともれやすくなるため、体格に合ったものを選んでください。使い方に迷うときは、動物病院で尋ねてみましょう。
尿失禁による皮膚のトラブルを防ぐにはどうすればよいですか?
尿が皮膚についたままだと、かぶれや炎症を起こしてしまいます。汚れに気づいたら、ぬるま湯で洗い流すか、濡らしたタオルでやさしく拭き取ってください。こすると皮膚を傷めるため、押さえるように拭くことが大切です。
拭いたあとは、しっかり乾かしておきます。湿ったままでは、細菌が増えて炎症につながります。おしりまわりの毛が長い場合は、短く整えておくと汚れが付きにくくなります。赤みやただれが見られるときは、そのままにせず動物病院で診てもらいましょう。かゆみから舐め続けると、悪化してしまいます。
どのような様子が見られたら受診したほうがよいか教えてください
尿がもれる状態に気づいたら、まずは一度受診することがすすめられます。病気が背景にあることも多く、原因を確かめてはじめて対応が定まります。年齢のせいと決めつけないことが大切です。
とくに、尿に血が混じる、排尿のときに痛がる、何度もトイレに行くのに尿が出ないといった様子は急を要します。尿が出ない状態は命に関わることもあるため、時間を置かず連絡してください。飲む量や尿の量が急に増えた場合、元気や食欲が落ちている場合も、早めに相談したいところです。

編集部まとめ

犬の尿失禁は、避妊手術後のホルモンの変化や膀胱炎、結石、神経の病気、加齢などによって起こります。動物病院では尿検査や血液検査、画像検査によって原因を調べ、薬や手術による治療が行われます。自宅では水を制限せず、おむつや吸水シーツを活用しながら皮膚を清潔に保つことが大切です。気になる様子があるときの受診を検討する際の参考にしてみてください。

【参考文献】