大切な愛猫がご飯を食べてくれない、食欲がなさそうだというのはとても心配なものです。猫がご飯を食べないのはなぜなのでしょうか。
本記事では猫がご飯を食べない時の原因と、その時に飼い主が対処できる方法を紹介します。
愛猫がご飯を食べず悩まれている方の参考になれば幸いです。
猫がご飯を食べない原因は?
猫がご飯を食べない、食欲がない場合にどのような原因が考えられるのでしょうか。そもそも猫に限らず、いきものは食事をしなくては生命の維持ができません。
食欲は生理的欲求の一つであり、それがないというのは何かしらの原因がある筈です。そしてその原因は多岐にわたり、獣医師も頭を悩ませる程です。
そこでまずは、猫がご飯を食べないときに一般的に多く見られる原因をご紹介します。
食事に飽きた・好き嫌い
人間と同様に、猫にも好き嫌いがあります。複数の猫を飼っていると、ある猫が好んで食べるご飯を、ほかの猫は見向きもしないという体験をした方もいるのではないでしょうか。
肉系なら食べるが魚介系はあまり食べない、ウェットフードのほうがよく食べるなど、猫の好みもさまざまです。当然好きなご飯でなければ猫も食欲がわかないので食べてはくれません。
また一般的にいろいろな食事を与えられて育つ犬や猫は、新奇な食べものを食べようとする行動がみられるといわれます。つまりいくら好きなものであっても、同じ食事ばかりを与えられていると飽きてしまい、食べなくなってしまうのです。
なお、飽きただけの場合はしばらく経つとまた同じご飯を食べてくれることが多いでしょう。一方そのご飯が嫌いな場合は、間をあけても食欲が戻ることはないため、食事を変えた方がいいかもしれません。
ストレス・発情期
猫は家につくという言葉があります。引っ越しをして家が変わった際、飼っていた猫がずっと隠れて出てこず食事もとらなかった経験をした方もいるでしょう。
家は変わらなくても、リモートワークや仕事の関係でずっと家族が家にいるようになったなどの変化もあります。さらには新しいペットを迎え、多頭飼いになることも大きな変化の一つです。
このようにさまざまな要因で生活環境が変化すると、猫には強いストレスがかかります。その結果として食欲がなくなりご飯を食べないことが起こるのです。
また避妊・去勢手術をしていない場合、発情期を迎えると食欲が落ちる場合もあります。この場合はほかにも発情期特有の行動が出るので、それで見分けられるでしょう。
加齢による食事量の変化
猫も年をとります。人間と同様に猫も年をとると運動量が減り、消化機能も衰えてきます。そうすると以前に比べて食事量が減ってきたと感じることが増えてくるでしょう。
年をとることで、病気になる確率も高くなります。ご飯を食べない理由が加齢によるだけなのか、病気が隠れていないか、きちんと獣医師のチェックを受けることをおすすめします。
病気・誤飲
猫の食欲不振で気をつけなくてはならないのが、病気が原因になっていないかです。
後でも述べますが、食欲不振を起こす病気は多岐にわたります。あらゆる基礎疾患によって食欲不振が起こる可能性があるといっていい程です。
消化器をはじめとする内臓系の病気はもちろん、歯周病なども食欲不振を招く原因になります。
病気のときは突然ご飯を食べなくなる場合だけでなく、徐々に食欲が落ちることもあるので注意が必要です。
また異物誤飲のため食物がのどを通らない、消化管穿孔を起こした場合も食欲不振が起きる可能性があります。この場合は一刻を争うので、おかしいと感じたらすぐに獣医師の診察を受けましょう。
ワクチン後などの一時的な食欲不振
ペットが健康に過ごすためにはワクチン接種が欠かせません。高い確率で感染症などを予防してくれるため、完全室内飼いの猫であってもぜひ受けておきたいものです。
しかしワクチンは種類によってさまざまな副反応が出る可能性があります。その一つが食欲不振です。ワクチンの種類や猫の個体差にもよりますが接種後数日程度、、副反応で食欲不振が起こる可能性があります。
またワクチン摂取のために病院に行く行動そのものがストレスになって食欲不振になることもあるでしょう。
ワクチンなどの場合はどのような副反応が出るかある程度わかるので、獣医師の説明を受け、様子をよく確認することをおすすめします。
猫が食欲不振のときの対処法
猫がご飯を食べない場合、その原因はさまざまです。なかには獣医師での診察が必要なものもありますが、特に身体的に問題がなくても食欲がないこともよくあります。
そこで、身体的に問題がないのに食欲がない場合に、おすすめしたい対処法をいくつかご紹介します。
人肌に温める
猫のフードにはさまざまなタイプがあり、ウェットフードは開封後、冷蔵庫で保存することが多いです。
しかし冷蔵庫で保存した冷たいご飯は香りが弱く、あまり猫の好みには合わないそうです。そこで電子レンジなどを使い、少しだけ温めて与えるとよく食べるようになるでしょう。
猫は40度くらいのご飯を好む傾向にあるといわれます。電子レンジなどで40度くらいに温めると、フードの香りが立ち、その香りで食欲がそそられて食が進むそうです。ただし温めすぎても風味が変わってしまうので、くれぐれも適温を守ってください。
リラックスできる場所で与える
先程触れたように、引っ越しやペットを含めた家族構成の変化により、猫は大きなストレスを感じます。このようなストレスで食欲が落ちている場合は、ストレスを取り除きリラックスできる環境を作ることで食欲の改善が期待できます。
一般的に猫は人目につかない狭い場所を好むといわれるので、そのような場所で食事ができるようにしてみましょう。仕切りなどを使ってスペースを作るのもおすすめです。
また引っ越しで生活環境が変わった場合は、引っ越す前に猫が使っていた食器やタオルなどをそばに用意して安心できる環境を作るのもいいでしょう。リラックスできると食欲も増すかもしれません。
ご飯を変える
最初に述べましたが、猫も人間と同様に好き嫌いがあったり、食事に飽きてしまったりします。このような場合はご飯を変えることで食欲が戻るかもしれません。
ドライフードをウェットフードに変えたり、食材の種類が違うものにしたりするのも効果的です。ドライフードをふやかしても、食べやすくなり食欲が増すといわれます。猫のフードにもいろいろなタイプのものがありますから、試してみるとよいでしょう。
なお、単に飽きた場合はしばらくして戻すとまたそのフードを食べる場合もあります。また、盛り付ける際に小山を作るようにすると猫が食べやすく、よく食べるといわれています。
遊びの時間を作る
猫は遊ぶことが大好きです。たくさん遊ぶと運動量が増え、ストレスの解消にもつながります。飼い主さんとのスキンシップにもつながるでしょう。
もちろん猫の食欲増進にもよい効果が期待できます。
ぜひ猫が思う存分遊ぶことができる時間を作ってあげましょう。
とはいえふだん忙しくてなかなか時間が取れない方もいるでしょう。短時間でも何回か遊ぶ時間を取るなど、ぜひ工夫してみてください。
おやつを与え過ぎないようにする
猫の食欲がないとき、意外な原因になるのがおやつです。遊んでいるときなど、おやつを与えて猫がおいしそうに食べる様子を見るのが楽しみという方も少なくありません。猫にせがまれるとついついおやつを与えてしまうのは誰しも心当たりがあるでしょう。
しかしおやつを食べさせ過ぎると、ご飯の時間にはお腹がいっぱいで、食欲がわかないことになりかねません。人間の場合と同様に、あくまでもご飯を中心にして、おやつは食べさせ過ぎないように気をつけましょう。おやつは1日の摂取カロリーの20%までが目安です。
猫がご飯を食べないときのチェックポイント
先程も述べたように、猫がご飯を食べない場合に問題なのは、病気が隠れていないかどうかです。一般的に病気があって食欲が落ちている場合は、食欲不振だけではないさまざまな症状があらわれます。
そのため食欲がない場合は、ほかに気になる症状がないかよく観察することが大切です。
元気がない
元気かどうかというのは、猫の体調を見るうえで重要なチェックポイントの一つです。例えば好き嫌いで食べない場合は食欲そのものはあるので、食べたいご飯が出てくるまで食事をせがむなどするでしょう。
しかし体調が悪く食欲そのものがない場合は食事をせがむことはありません。人間もそうであるように、元気がなくあまり遊ばない、寝てばかりいる場合は注意が必要です。
また猫の場合、具合が悪いと身を隠す行動がみられる場合があります。物陰や人のいない部屋にこもって出てこないときも、元気がないサインである場合があるので注意しましょう。
水を飲む量が増えた
猫がかかりやすい病気として知られるのが腎臓病です。腎臓病のときによく見られる症状の一つが多飲多尿つまり大量に水を飲み尿量が増えることです。また糖尿病や甲状腺ホルモンの病気などでも同様の症状がみられるといわれます。
これらの病気が怖いのは、徐々に進行することが少なくないため、おかしいと気付いたときにはかなり病状が進んでいる場合もあるという点です。
特に高齢になってきた猫の場合はリスクが高まるので、定期的な検査をおすすめします。また日頃から猫の飲んでいる水の量や尿量を確認しておくようにしましょう。
おしっこが出ていない
逆に尿が出ていないというのも重大な病気の可能性がある症状です。特に尿路閉塞という重大な病気は命に関わるものであり、異常を感じたらすぐに獣医師に診せるべきものです。
この病気は特にオスの猫で多く、何度もトイレに行くが尿が出ない、お腹などを触られるのを嫌がるなどの症状とともに食欲不振があらわれます。尿が出ない症状が半日以上続くと危険です。
吐く
もともと猫は吐くことが多く、毛玉などを吐き出しているのを見たことがある方も少なくないでしょう。しかし、頻繁に吐くのはどこかおかしいと疑うべきチェックポイントの一つです。
先程紹介した尿路閉塞や腎臓病、甲状腺の病気などの際には一日に何度も吐く、吐こうしてもなにも出てこないといった症状が出てきます。また異物誤飲の際にも吐くことが多く見られます。いずれにしてもふだんと様子が違う場合は要注意です。
猫がご飯を食べないときの様子見可能な時間は?
何度も吐く、ぐったりするなどの症状が出ていれば即病院に行く判断ができます。しかし今述べたように単にご飯を食べないだけであれば、様子見をしていていいのか、病院に行けばいいのか迷うことも少なくないでしょう。
大人の猫の場合は1日程度食べない場合もありますが、子猫の場合はあっという間に命にかかわることになってしまいます。そのため子猫の場合は様子見をせず、気付いたらすぐに病院に連れていくようにしたほうがよいでしょう。
特に生まれて間もない子猫の場合は、8時間あいた程度でも命にかかわる可能性があります。
猫がご飯を食べないときの病院に連れて行く目安
猫がご飯を食べないでいると、肝リピドーシスや低血糖の症状を起こし、命にかかわります。大人の猫の場合、絶食が1日続く、または2日から3日程いつも食べているご飯をあまり食べないのならば食欲不振で受診を考えたいレベルです。
子猫の場合は月齢にもよりますが、まったく食べていない状態が8時間から半日続いたら受診しましょう。また先程も述べたように、食欲だけではなく元気がなかったり吐いたりといった別の症状がある場合は様子見をせず、すぐに受診をおすすめします。
猫の食欲には個体差とムラがある
なお、ここまでの目安はあくまでも一般的なものです。猫には個体差があり、食欲にもムラがあるものです。
ふだんから食が細い猫の場合、標準よりも食べる量が少なくてもいつも元気というなら、あまり心配はいらないかもしれません。また今日はあまり食べなかったが翌日は完食したなど、日によりムラがある場合もあります。
ふだんの様子をよく覚えておいて、ふだんとどう違うのか観察を怠らないことが、異変に気付くためには大切な習慣です。
まとめ
猫がご飯を食べない場合、その原因はまさに多種多様であり、特に心配いらないものから即病院受診が必要な緊急事態まであります。ふだんとの違いやほかの症状の有無が判断する際の重要なポイントです。
日頃から自分の猫の様子をよく観察して、愛猫との楽しい時間を長く過ごすことができるようにしていきたいものです。日々の愛猫の様子を記したうちの子日記などをつけておくと、ちょっとした様子の違いに気付きやすくなります。
気になる症状があるときは、かかりつけ医に相談しましょう。
参考文献