大切な愛猫が外耳炎に罹ると、大変心配になるでしょう。
外耳炎は猫が耳を痒がっていたり頭をブルブル振ったりするので、病気に罹患していることを認識しやすいです。
そのため、しっかり管理していれば重症化を防げる病気です。
本記事では、外耳炎の概要・治療方法・予防方法を解説します。読めば外耳炎のことがわかるので、ぜひ参考にしてください。
猫の外耳炎はうつる病気?
耳介(耳たぶ)から鼓膜までの間を外耳道と呼びますが、ここに炎症ができることを外耳炎といいます。外耳炎は基本的に人にうつる病気ではありません。
しかし、外耳炎の原因が耳ダニの場合は、人にうつる可能性があります。そのため、耳ダニ予防をするようにしましょう。
猫が外耳炎を発症する原因
猫の外耳炎は犬程、報告数は多くなく、子猫を中心にまれに発症します。また、再発の有無は2024年現在では不明ですが、報告されていません。
外耳炎の特徴として多いのが細菌や真菌、耳ダニによる感染やアレルギーです。
耳の中に耳垢が溜まってしまい、そこに細菌や真菌が異常繁殖して強烈な匂いを発生させ、変色した耳垢を生み出します。
特に耳ダニの場合は、ダニを介して人へも感染する恐れがあるので注意が必要です。
細菌・真菌の繁殖
耳の中に耳垢が溜まり、そこに細菌や真菌が繁殖し外耳炎が起こります。
耳の形状が特徴的で耳垢が取りにくい猫程罹りやすいといわれており、例としてスコティッシュフォールドやアメリカンカールは折れ耳の特徴があるため細菌や真菌が繁殖しやすい傾向にあります。
耳垢が体外に排出しづらかったり湿気がこもりやすかったりすると、空気の通りの悪さから細菌・真菌が繁殖しやすい傾向にあるでしょう。
加えて猫の場合、人間と違って長い体毛に覆われており、より湿気が溜まりやすい点にも注目する必要があります。
飼い主さんが耳のチェックをしにくい点も外耳炎を見逃してしまいがちな理由の一つでしょう。
寄生虫
耳ダニ(耳ヒゼンダニ)と呼ばれるダニは寄生虫の一種であり、耳ダニが原因で外耳炎が起こることがあります。
強い痒みが出るほか、黒っぽい水垢が大量に出る特徴があります。耳を痒がり、ひっきりなしに耳を構っている様子は、見ていて大変かわいそうです。
また耳ダニは感染力も強く、人に感染する場合もあるため注意が必要です。
ただし感染しても人に寄生しませんが、猫の耳ダニ寄生を除去しなければ人への感染も続くと考えた方がいいでしょう。
耳ダニは正式名称をキュウセンヒセンダニと呼んでおり、大きさが0.3ミリメートル〜0.4ミリメートル程度で目を凝らさなければ見えない程小さいです。卵から成虫になるまでの約3週間を外耳道の中で過ごし、そのときに痛みが出ます。
猫の外耳道を覗いてみて、真っ黒な汚れの表面に白い粒粒が見えたら、それが耳ダニと考えられます。
なお、耳ダニは人だけでなくほかの猫や犬にも感染するので、多頭飼いしている人は注意が必要です。
複数の内の一頭だけでも耳ダニに感染していたら、ほかの子たちと隔離しなければ感染がどんどん広がってしまいます。
アトピー・アレルギー
アレルギーが原因のケースもあります。
屋外にある何かしらの植物の種子が耳の中に溜まり、その種子がアレルギー反応を引き起こして炎症を起こすこともあります。
この場合、必ずしも耳垢が出るとは限らないため、猫が耳をかまう仕草をしているかどうかで外耳炎かどうかを判断しましょう。
猫の場合、食べ物によってアレルギー反応を引き起こすことが多くあり、食べ物に気をつけることがアレルギーによる外耳炎を防ぐ効果につながる可能性があります。
またアトピー性皮膚炎など全身性皮膚疾患に罹ることもあります。気になってついつい患部を引っ掻いてしまい、傷口が炎症して外耳炎になりやすいケースが挙げられるでしょう。
異物混入
何かしらの異物が混入して炎症を起こし、外耳炎に罹ることもあります。
尖った実などが風に運ばれたりなどで耳の中に入ると、それが原因となり耳を刺激し、痛くなることもあります。
血が出る程後ろ足で必要以上に耳を引っ掻いていないか、頭をゆすっていないかなど、不自然な行動をしていないか定期的に猫を観察しましょう。
また耳の点検も欠かせません。異常を感じたら獣医師に診てもらうことも必要です。
腫瘍・ポリープ
腫瘍やポリープが原因で外耳炎になるケースもあります。
外耳道に腫瘍ができることで悪さを起こし、外耳炎を発生させます。
猫の外耳炎にみられる症状
猫が外耳炎に罹ると、匂いや色が独特な耳垢が大量に出たり、腫れや湿疹が起こります。
また必要以上に頭をゆすったり、血が出る程後ろ足で執拗に耳のあたりを掻くような仕草を見せることもあります。
外耳炎そのものは身近な病気であるため、罹患することに不思議な点はありません。
ただし、罹った状況を放置すると、さらに悪化して中耳炎や内耳炎になることもあります。
また、綿棒などで無理やり耳垢を除去する行為もおすすめできません。
動物病院へ受診し、必要な処置を受けたのち、自分でできるセルフケアを聞いてみるといいでしょう。
耳垢が大量に出る
細菌(緑膿菌、ブドウ球菌など)感染の場合は黄色い耳垢やドロっとした耳垢が特徴です。
膿んだ匂いがするため、特徴としてわかりやすいです。
真菌(マラセチアなど)感染の場合は茶色い耳垢が取れ、独特の臭い匂いがします。
細菌感染も真菌感染も、耳を執拗に掻いたり、耳を床に押し付けたり耳や頭を振る行動が見られます。
大変痒がるため、日頃から猫の様子を観察していれば気がつくことが多いでしょう。
ブドウ球菌やマラセチアは正常な耳道に存在しており、抵抗力が落ちたとき、何かしらの要因によって異常繁殖して痒みや痛みが強くなります。
その一つの要因として、梅雨時期の湿った季節によって耳の風通しが悪くなることが挙げられます。
梅雨時期は人でもジメジメしていて気分が悪くなりがちですが、猫も同様に病気に罹りやすいことも、意識しておきましょう。
耳が臭い
人間の耳は外耳道がまっすぐですが、猫は外耳道がL字型の構造をしており、通気性が良くありません。
そのため、耳の奥まで埃などが入らないように分泌物を排出して固めるようにできており、この固まったものが耳垢となります。
細菌や真菌感染の場合、前述したとおり膿んだ匂いや鼻をつくような独特の匂いがします。
正常な場合、耳の臭いはほとんどなく、そして耳垢もほとんど出ません。
いつもと違う匂い・一度に大量に耳垢が出てくる・猫が耳を気にしているそぶりがあるなど、不自然な点があれば、病院で診てもらいましょう。
腫れ・湿疹
菌に感染していると、腫れや湿疹が見られる場合もあります。
独特な匂いや異常に変色していることが考えられるため、獣医師へ診てもらいましょう。
猫の外耳炎が疑われる場合の検査方法
外耳炎が疑われる場合の検査方法はさまざまあります。
基本的には耳鏡を使った検査が有効ですが、洗浄剤の種類を判断したいときやダニ・細菌の有無を調べるために耳垢の検査をする場合もあります。
また、CTやMRIを使用した画像診断により耳の奥の状況を把握できるため、気になる人は獣医師へ相談してみましょう。
耳鏡検査
耳鏡を使って外耳道や鼓膜を観察する検査です。肉眼では見えづらい耳の中を確認するのに適しており、外耳道から鼓膜まで検査が可能です。
耳鏡を使って、耳道の腫れ・赤み・鼓膜の状態・耳垢の質や量が確認できます。
ただし腫れや耳垢で耳道が塞がっていると、中の様子が確認できません。その状況でどのような洗浄剤や点耳薬が適しているかがわかりかねるため、耳垢の検査をします。
耳垢検査
耳垢を採取し、顕微鏡を使ってどのような洗浄剤や点耳薬が適しているかを判断します。その他、耳ダニや細菌・真菌が増殖していないかも確認できます。
ほかにも採取した耳垢に特殊な溶液を浸すことで、耳垢に含まれる成分や細菌・酵母菌・白血球などの確認も可能です。
CT・MRI検査
炎症が外耳道を越え、中耳まで炎症が起きていることが疑われる場合は、CTやMRIを使って鼓室や耳道壁などを画像検査します。
CTやMRIでは外耳だけでなく、中耳・内耳・その周辺の組織に至るまで細かく症状がわかるため、炎症の状況によってはこれらの機器を使用する場合もあるでしょう。
一部の施設ではビデオオトスコープ(VOS)による耳専門の内視鏡を用いた診断や治療が行われることもあります。これは耳道や鼓膜の観察とともに、洗浄や異物除去までもが行える機器であり、難治性の外耳炎に対して低侵襲な治療が行えます。
猫が外耳炎と診断されたときの治療方法
一般的には、耳道内の洗浄が有効です。外耳炎は耳垢が原因で起こることが多いため、まずは耳垢の除去が必要です。
その後、点耳薬や内服薬を投与します。
点耳薬・内服薬の投与
細菌や真菌を駆除するため、抗生剤・抗真菌剤などの点耳薬を投与します。
ただし、鼓膜が破れている場合は点耳薬を投与できません。耳鏡などで鼓膜の状況を確認し、破れていないことを確かめてから点耳薬を投与します。
腫れや膿がひどい場合や、猫が嫌がり点耳ができない場合は内服薬を投与する場合もあります。抗菌剤や抗真菌剤が含まれた内服薬で様子をみつつ、点耳薬も併用するケースもあるようです。
ただし、基礎疾患として耳ダニが寄生している場合は点耳薬だけでは回復せず、駆虫薬での治療が必要となるケースも多い傾向にあります。
外科的手術
外耳炎を放置していると、腫れや膿の悪化によって外耳道の形が変わることもあり、この場合は外科的手術が必要になります。
外耳道の狭窄や鼓膜の穿孔がそれにあたりますが、本来外耳道は自浄作用によって耳垢などが自然に体外へ排出されるようになっています。
外耳と内耳は鼓膜で区切られていますが、外界とつながる外耳道は分泌腺から出る分泌物によって、汚れが耳の奥に入らない構造になっているのです。
その分泌物によって汚れと一緒に耳の奥から外へと流されていくため、通常は人の手によって洗浄する必要はありません。
しかし、細菌が異常繁殖すると自浄作用がうまく働かず、炎症を発生させて耳垢が排出されにくくなることがあります。
それをそのまま放置すると外耳道の形が変化し、さらに耳垢が排出されにくくなる悪循環に陥るでしょう。このような場合、手術で対処します。
飼い猫が外耳炎にならないための予防法
耳を清潔に保つようにしましょう。
外耳道は構造上、外と接しており、どうしても汚れが付着しやすいです。清潔に保つことで外耳炎などの予防が可能です。
また、爪も伸ばしすぎないよう定期的に切るようにしましょう。爪が長いと体を引っ掻きやすくなり、引っ掻いた傷から細菌感染を起こす可能性もあります。
特に耳がジメジメしがちな梅雨時期〜夏にかけては注意が必要です。
定期的な耳掃除
月に1〜2回程度、耳掃除を心がけましょう。
綿棒を使っての掃除は、耳の中を傷つけてしまう恐れがあるためおすすめしません。コットンなどやわらかい布で、耳の中をポンポンと軽く拭うようにして汚れを取りましょう。
前述したとおり、本来猫の耳は自浄作用があるため、耳の中の古い角質や分泌物は自然に体外へ排出されるようにできています。
そのため、気になったときに耳掃除をしてあげる程度で構いません。その頻度が、月1~2回程度となります。
耳垢は耳介のしわの溝に溜まることが多いので、定期的に除去するようにしましょう。
猫の耳の中の皮膚は大変やわらかいため、無理にこすると皮膚が破れてしまいます。コットンを湿らすようにして優しく拭き取ってあげることを心がけてください。
このとき、耳掃除の洗浄液「イヤークリーナー」を使用しましょう。
コットンにイヤークリーナーを沁み込ませ、指を強く押し込むことなく、指が届く範囲で優しく拭き取ってください。
洗浄後に洗浄液が耳の中に少々残っていても、耳掃除の後に猫が首を振ることで液が排出されたり、自然に乾燥したりします。
ただしイヤークリーナーは外耳道に外傷がある場合は使用しない方がいいでしょう。イヤークリーナーは刺激が強く、かえって治療を遅くしてしまう恐れがあるためです。
耳垢の量が異常に多いもしくは、強い痒みや匂いを出すようなら外耳炎を疑うべきかもしれません。
外耳炎に罹患しているときに無理やり掃除するのはおすすめできないので、できるだけ早急に獣医さんの診断を受けるようにしましょう。
予防薬の投与
予防薬の投与も有効です。日頃のケアが欠かせないため、しっかり投与を行って耳を清潔に保つことを心がけましょう。
まとめ
外耳炎は猫をよく観察していると防げる病気であり、基本的には早期発見・早期治療が欠かせません。
放っておくと炎症が中耳、内耳にまで達して中耳炎・内耳炎が発症するケースもあります。ですが、綿棒などを使っての耳掃除は、外耳道の粘膜を傷つけてしまう恐れがあるためおすすめできません。
月に1〜2回、汚れている箇所をコットンなどで優しく拭いてあげてください。
耳から匂いがする・異常がある・猫の行動がおかしいようなら獣医師に診断してもらいましょう。
参考文献