猫の血便元気ある場合も獣医師に診せるべき?血便の原因や対処法を解説

猫の血便元気ある場合も獣医師に診せるべき?血便の原因や対処法を解説

猫の血便を見つけると、飼い主としては驚き不安になるものです。すぐに動物病院に連れて行くべきかどうか、悩むこともあるかもしれません。

しかし猫が普段どおりに過ごしている様子を見ると、「うんちに血が混ざっているけれど、元気はあるみたい?」と迷ってしまうものです。

猫が血便をしたとき病院に行くかどうか適切に判断できるように、血便の原因を把握しておきましょう。血便の原因や早急に受診すべき症状、血便の対処法について解説します。

猫の血便は不調のサイン

猫の血便は不調のサイン

猫が血便をするときは、元気がある・ないにかかわらず、体に異常があるサインです。猫の便の様子から、異常があるおおよその場所が推定できます。

血便は主に消化器の異常のサイン

下痢・軟便・便が硬いなど便の様子にかかわらず、猫が血が混ざっている便をしたら異常のサインです。

血便は鮮血が混ざる便と、タール便とも呼ばれる黒色の便の2種類です。血便の色が異なる原因は、出血している場所にあります。

鮮血が混ざる血便の場合、大腸や肛門付近から出血している可能性があります。黒色のタール便の原因は、胃などの上部消化管からの出血だと推定していいでしょう。

このように便に血が混ざっていたら、上部消化管・下部消化管・肛門のどこかが傷ついて出血していると判断できます。

猫は元気でも血便を出すことがある

血便にくわえ、猫が見るからにぐったりしている・元気がないときは、「すぐに動物病院に連れて行かなくては」と判断できます。

しかし血便をしているものの猫に元気がある場合は、病院に行くべきかどうか迷ってしまうでしょう。

消化器の異常は、猫の様子を見ていてもわかりにくいものです。しかし血便が出たら、消化器に異常があるサインだと判断できます。

癌などの重大な病気の初期症状として血便を出すことがあります。血便をしても猫に痛みなどの自覚症状がない場合は、普段どおり元気にしているケースもあるため、注意が必要です。

血便をしても猫に元気がある場合は、緊急性は高くないと判断してもよいですが、必ず動物病院を受診しましょう。

猫の血便の原因と対処法

猫の血便の原因と対処法

猫が血便をする原因と対処法について解説します。血便を起こしている原因を取り除くためにも、まずは原因を突き止めることが大切です。

ストレス

猫が血便をする原因のひとつとして、ストレスがあげられます。猫は急激な生活環境の変化や、落ち着かない環境を好まないため、そういった環境下に置かれるとストレスを感じます。

ストレスを感じていると、血液中のリンパ球などの免疫機能を持つ白血球が減少し、免疫力が低下してしまうのです。リンパ球が減少しているかどうかは、病院の血液検査でわかります。

免疫力が下がると、ウイルス・細菌に感染しやすくなります。例えば1歳未満の子猫に多く見られる猫伝染性腹膜炎の場合、成熟した健康な猫なら発病する確率は高くありません。

しかしストレスにより免疫力が低下していると、成熟した猫でも発病するケースが多く見られます。猫伝染性腹膜炎を発症して便に血が混ざっているのです。

このような場合の対策は、動物病院を受診して病気の治療をしながら、猫が落ち着いて過ごせる環境を整えることです。

病気

猫が病気になっているときも、血便が出るケースがあります。胃腸炎のような消化器官の炎症や、腸にポリープや癌ができていると、そこから出血して便に血が混ざるのです。

ウイルス・細菌感染や寄生虫など、猫はさまざまな原因で消化器官の病気にかかります。そのため、血便が出たからといってどの病気かは特定できません。

しかし前述のとおり、鮮血が混ざった血便か黒色のタール便かで、出血場所の推定は可能です。

癌やポリープが原因の場合、早期発見・早期治療が大切です。また猫自身の体調も心配ですが、サルモネラ属菌から感染するサルモネラ症のように、人間にも感染する病気もあります。

この場合、血便の原因を突き止め、猫の治療をすることが一番の対策です。猫の病気を悪化させないため、そして人間に感染しないためにも、動物病院を受診しましょう。

寄生虫

猫に感染する寄生虫は、ダニやノミばかりではありません。鉤虫(こうちゅう)や回虫など、消化器官に寄生する虫もいます。

これらの寄生虫に感染すると鉤虫症や回虫症を発症し、猫の便に血が混ざるのです。鉤虫症や回虫症は土からの感染と、母猫から子猫へミルクで感染するケースがあります。

鉤虫は口にカギを持った1~2cm程の線虫です。鉤虫症は鉤虫が猫の腸壁に寄生して吸血するため、血便だけでなく貧血・腹痛・食欲不振などの症状があらわれます。

回虫は5~10cm程の長い線虫です。子猫に寄生するケースが多く、回虫症の症状は血便・嘔吐・下痢などです。

どちらも便の中に卵があるため、動物病院で糞便検査をするとわかります。猫の寄生虫対策としては、動物病院で定期的な検便と、駆虫薬が効果的です。

異物誤飲

異物誤飲

食べ物ではない物を口から摂取し、摘出しなければならない状況になることを異物誤飲といいます。これは人間の医療でも使用される言葉です。異物誤飲が原因で猫が血便をするケースもあります。

目を離した隙にテーブルの上やゴミ箱の中の物で、猫が遊んでいることはありませんか?猫は与えられたおもちゃ以外に、遊べるものを自分で見つけることが多くあります。

猫の口に入る大きさの異物で遊んでいると、そのまま飲み込んでしまう可能性があります。硬い物や尖った物だけでなく、紐状の異物も猫にとって危険であることを覚えておきましょう。

毛糸・リボンのように、ある程度の長さがある紐状の異物を飲み込むと、腸にひっかかって腸閉塞や腹膜炎を起こすケースがあるため誤飲には注意しましょう。

また猫にとって有毒な食べ物を食べて中毒になってしまったときも、血便が見られます。たとえばチョコレート・ココア・コーラなどに含まれる、カフェイン・テオブロミンは、血便以外にも嘔吐・下痢・血尿などの症状も引き起こします。

猫が血便をして異物誤飲をした形跡があったら、動物病院を受診しましょう。異物誤飲の対策は、猫にいたずらされたくない物を出しっぱなしにしないことです。

猫の血便で考えられる病気

猫の血便で考えられる病気

ストレスが引き金になったり、細菌・ウイルスで感染したりする病気が、猫の血便につながるケースもあります。病気とその原因、症状について解説します。

胃腸炎

胃腸炎とは病名ではなく、胃や腸が炎症を起こして腹痛や下痢を起こす病気の総称です。原因は細菌・ウイルスなどの感染があげられます。

胃腸炎の中のひとつに、猫伝染性腹膜炎ウイルスがあります。腸コロナウイルスと呼ばれているもので、腸コロナウイルス自体は、感染しても90%以上の猫は発症しません。

感染してから腸コロナウイルスが突然変異を起こし、猫伝染性腹膜炎ウイルスになることで、発症しやすくなるのです。血便以外には下痢・食欲減退・発熱などの症状があり、肝臓や腎臓が冒されるケースもあります。

またサルモネラ属菌から感染するサルモネラ症も、多くの猫は無症状です。しかし子猫や免疫力の低下した成猫は、血便・下痢・嘔吐などの症状があらわれます。

サルモネラ症は猫から人間に感染する動物由来感染症なので、人間も胃腸炎・頭痛・高熱などが起こります。猫の身の回りを清潔に保つ・触った後は手を洗う・猫との過剰なふれあいを控えることが対策です。

腸内ポリープ・悪性腫瘍

腸内ポリープ・悪性腫瘍ができて出血が続いていることが原因で、血便となってあらわれるケースがあります。

腸以外にも肛門付近のポリープ・悪性腫瘍が原因で、血便が出ている場合も考えられます。このときは腸に関係ないので、下痢をしていなくても出血することを覚えておきましょう。

そのほか肛門付近に傷ができているときや、便秘がちな猫が硬い便をするときにも出血するなど、さまざまな原因があります。

猫に元気があって下痢や痛がる様子がなくても、念のため動物病院で検査をしましょう。

猫パルボウイルス感染症

猫パルボウイルス感染症は猫のパルボウイルスに感染する病気です。正式名称は猫汎白血球減少症で、発症すると白血球が少なくなり、免疫力が下がってしまいます。

発症すると、元気喪失・40℃近い発熱・嘔吐・下痢・血便・脱水症状と進んでいきます。パルボウイルスに感染してから数日という短い潜伏期間で突然発症し、急激に悪化する点が特徴です。

子猫が感染すると数日で死亡してしまうケースも少なくないので、飼い主として予防に努める必要があります。

猫パルボウイルス感染症は、屋外で生活している猫が保有しているケースが多くみられます。外を歩いている人間の靴にウイルスが付着すると、屋内の猫が感染するほど感染力が強いウイルスです。

そのため、猫を室内飼育にするだけでは完全な予防とはいえません。正しくワクチン接種を行って、猫を守りましょう。

トキソプラズマ症

トキソプラズマ症とはトキソプラズマ原虫という寄生虫から感染する病気です。豚の生肉や生焼け肉を猫が食べると、感染する可能性があります。

トキソプラズマ症に感染しても、多くの成猫は症状が出ないか軽症で済みます。しかし子猫や免疫力が低下している猫が感染すると、発症するケースがあるため、注意が必要です。

猫が発症した場合、急性の症状は食欲不振・発熱・下痢・嘔吐などです。慢性になると症状が続いたり再発したりと長引きます。受診してPCR検査または病理検査をし、抗原虫薬・抗生物質で治療します。

トキソプラズマ症は動物由来感染症なので、猫から人間に感染する点に注意が必要です。感染した猫は、トキソプラズマ原虫の発育形態を便に排出するためです。

人間も猫と同じく、加熱処理が不十分な豚肉から感染するリスクがあります。しかし猫のトイレを片付けた手を清潔にしないと、猫の便から感染するケースも0ではありません。

人間が感染しても無症状な場合が多いですが、妊婦が感染すると流産や先天性障害を引き起こす危険性があります。猫からの感染を防ぐためには、猫のトイレを清潔に保ち、手洗い消毒を徹底しましょう。

早急に受診したほうがよい症状とは?

早急に受診したほうがよい症状とは?

猫が血便をした場合、血便と猫の様子によっては、早急に受診したほうがよいケースもあります。動物病院にすぐ連れて行くかどうかの目安を解説します。

  • 肛門から激しく出血している
  • 便に混ざっている血の量が多い
  • 赤色の水様便
  • 元気も食欲もない
  • 下痢と嘔吐をしている
  • 下痢が激しい・何回もしている
  • 中毒になる可能性がある物を誤飲した
  • 皮膚に張りがない

皮膚の張りがなくなっているのは、脱水症状がひどい場合の症状のひとつです。猫に上記の症状が見られる場合は、早急に動物病院に連れて行きましょう。

猫の血便の対処法

猫の血便の対処法

猫の血便や下痢にはさまざまな原因があることがわかりました。血便の対処法は、受診して原因を突き止め、治療することです。

猫の健康のために、動物病院に行く前に準備しておくべきことを解説します。

うんちの時間・回数・量などをメモする

猫の血便の原因を突き止めるためには、受診の際、獣医師に多くの情報を伝える必要があります。

  • うんちをした時間
  • うんちをした回数
  • うんちの量

上記3点をわかる範囲内でメモしておきます。普段と比べて異なっている点や気付いた点があれば、併せて獣医師に伝えましょう。

うんちの色・様子などを伝えたい場合は、スマホなどでうんちの写真を撮って、獣医師に画像を見せるのも一案です。

普段から下痢をしがちなのか、急に血便が出たのかなどもメモしておきましょう。下痢をしている場合、急性なのか慢性なのかを判断するためです。

元気・食欲があるかどうか、便の硬さは普段と比べてどうかもわかるとよいでしょう。便秘がちな猫なら、その点も伝える必要があります。

うんちを持参し、動物病院で糞便検査

んちを持参し、動物病院で糞便検査

血便の原因を突き止めるために、まず便から検査します。そのため家で猫のうんちを採取して、動物病院に持っていく必要があります。

できれば当日に排出された新鮮なものがよいでしょう。採取するうんちの量は人差し指の頭程度で充分です。家で採取できなかった場合は、獣医師が猫の肛門から採便棒などで直接採取するケースが多いです。

猫の症状や獣医師の方針によりますが、糞便検査のほかに行う検査は、血液検査・血液化学検査・尿検査などが考えられます。

獣医師の判断により、必要な場合は腸の造影検査・内視鏡検査・生検による病理検査などが追加されることもあります。

普段の猫の様子やいつから血便をしているのかなど、獣医師からのさまざまな質問に答えられるように、用意したメモを持参しましょう。

食事内容や生活環境の改善

食事内容や生活環境の改善

猫が血便をした場合、受診して治療をしながら、食事内容や生活環境を改善していく必要があります。まず食生活については、獣医師の指示があれば従いましょう。

基本的に猫は、時間に関係なく少量ずつ餌を食べます。ドライフードとウェット・セミモイストフードを使い分け、猫が食べたいタイミングで餌を食べられるようにしましょう。

1日中餌入れを置いておくことになるので、定期的に交換し、常に清潔なものを用意しておきましょう。たくさん食べてしまう猫の場合、1日分の量を2~3回にわけるなどの工夫が必要です。

猫にストレスがかかっている生活環境の場合、改善する必要があります。猫が落ち着ける環境にするのが一番ですが、不可能な場合は獣医師に相談し、精神安定薬を処方してもらうのも方法のひとつです。

また猫を感染症から守るために、ワクチンを接種することも大切です。猫汎白血球減少症・猫ウイルス性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症は、3種混合ワクチンで予防できます。

猫白血病ウイルス感染症・猫免疫不全ウイルス感染症については、単独接種のワクチンが有効です。猫伝染性腹膜炎についてはワクチンが存在しませんが、完全屋内飼育を徹底すれば感染のリスクが低減します。

血便は猫が元気でも早めに獣医師に診せよう

血便は猫が元気でも早めに獣医師に診せよう<

猫が血便をした際は、普段と変わらず元気でも獣医師に診せる必要があります。

「うんちに少しだけ血が混ざっていた程度だけど…」と感じるかもしれません。しかし猫に自覚症状がないだけで、病気が潜んでいる可能性があります。

少しでも便に血が混ざっている場合、注意が必要です。ウイルス・細菌に感染している、または癌の初期症状が血便としてあらわれている危険性があるためです。

少量の血便で猫が元気にしているなら、夜間病院へ駆け込んだり、仕事を休んで病院に連れて行ったりする緊急性はないと判断してよいでしょう。

しかしなるべく早く動物病院に連れて行き、獣医師に検査をしてもらうと、病気の早期発見・早期治療につながります。

まとめ

辛い表情の猫

猫が血便をした場合、元気があっても消化器や肛門付近に不調があるサインです。少量でも便に血が混ざっていたら、動物病院を受診しましょう。

血便の原因は、ストレス・寄生虫・異物誤飲などが引き起こす病気であることがほとんどです。ウイルス・細菌感染による胃腸炎や、腸内ポリープ・悪性腫瘍の初期症状が考えられます。

なお鮮血混じりの水様便が大量に出る・元気も食欲もない・下痢と嘔吐などの重篤な症状がある場合は、早急に動物病院を受診する必要があります。

受診の際はうんちの時間・回数・量などをメモし、獣医師の質問に答えられるよう準備が必要です。

猫が血便をした場合は、猫に元気があっても油断大敵です。飼い主として猫の健康を守るために、なるべく早く動物病院に連れて行きましょう。

参考文献