猫も花粉症になる?症状や予防法、似た症状をもたらす病気について解説

猫も花粉症になる?症状や予防法、似た症状をもたらす病気について解説

飼い猫がくしゃみをしたり、鼻水を出したりしているのを見て「あれ?花粉症かな?」と感じたことはありませんか? 人間と同じように、猫にも花粉によるアレルギー症状が出ることがあります。ただし、人間とまったく同じような症状が出るとは限りません。この記事では、猫の花粉症について、その症状や治療法、予防法などを中心に、花粉症と似た症状をもたらす猫の病気などについても解説します。愛猫のくしゃみや鼻水が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。

猫の花粉症とは

猫の花粉症とは

猫の花粉症とはどのような症状を指すのでしょうか? また、花粉症の原因は何でしょうか? まずは、猫の花粉症がどのような病気なのかを見ていきましょう。

猫の花粉症の概要

実は、医学的には、猫には花粉症という疾患はありません。人間の場合も花粉症は医学用語ではなく、正式名称は季節性アレルギー鼻炎といいます。特定の季節に引き起こされるアレルギー性の鼻炎のことを、俗称として花粉症と呼んでいるのです。日本国内では、春先に飛散のピークを迎えるスギやヒノキの花粉に対してアレルギー反応を示す人が少なくないので、ほかのアレルギー性鼻炎と区別をして花粉症と呼ばれています。

猫にもアレルギー鼻炎の症状はあり、人間のように植物の花粉が原因となっていることもありますが、割合が顕著なわけではありません。一見、花粉症のように見える症状でも、猫の場合は別の原因がある可能性もあります。気になる症状があれば、早めに動物病院を受診するようにしましょう。

猫の花粉症の症状

猫には花粉を原因とするアレルギー症状は少ないと説明しましたが、まったくないわけではありません。人間の場合、花粉症の主な症状は、鼻の症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど)や、目の症状(かゆみ、涙、充血など)が挙げられます。また、体質によってはその他の身体症状が出る場合もあります。

猫の場合も、花粉に身体が過剰に反応してしまうことで、下記のような症状が出ることがあります。

・皮膚の発疹
・かゆがる、かきすぎて一部の毛が抜ける
・くしゃみ
・鼻水
・目やにが増える
・身体のあちこちを舐める
・目の周りなどの皮膚が赤くなる、目をかく
・咳をする

猫の花粉症では、特に皮膚のかゆみや発疹が主な症状とされています。くしゃみや鼻水、結膜炎などの症状もありますが、花粉による身体症状としては皮膚炎が一般的です。皮膚炎になると、身体を舐めたり掻いたりしてさらに炎症が広がる可能性もあるので、花粉の時期は特に気をつけてみてあげるようにしましょう。また、花粉による喘息の発症例も報告されています。

原因になりやすい花粉の種類

猫の花粉症の原因となる主なアレルゲンとその季節は下記のようなものがあります。

・スギ:2~4月
・ヒノキ:3~5月
・カバノキ科(シラカバ、ハンノキ):4~6月
・イネ:5~10月
・ブタクサ:8~11月

花粉症といっても、反応している花粉の種類によっては、春先だけでなく、どの季節でも起こる可能性があります。どのような物質(アレルゲン)に対して体が反応しているのかをより詳しく知るためには、動物病院でのアレルギー検査が必要になります。

猫の花粉症の検査と治療

猫の花粉症の検査と治療

では、猫が花粉症のような症状を見せた場合、動物病院ではどのような検査や治療が可能なのでしょうか? ここからは猫の花粉症の検査と治療について見ていきましょう。

検査方法

従来、血液アレルギー検査は犬にしか行えませんでしたが、近年では、猫にも行えるようになりました。調べることのできるアレルゲンのなかには、花粉も数種類含まれています。ただし、アレルギー検査の精度は100%ではないため、注意が必要です。あくまでもアレルギーを診断するための補助的な検査となりますので、獣医師と相談のうえ、検査をするかどうかを検討しましょう。

治療方法

​​猫の花粉症の治療法には、薬物療法と減感作療法の二種類があります。

・薬物療法
人間の花粉症と同じく、抗ヒスタミン剤による治療が有効です。抗ヒスタミン剤だけでは皮膚のかゆみが抑えられない場合や、皮膚を搔き壊したり、舐め壊したりしている場合は、ステロイドや免疫抑制剤が使用されることもあります。また、掻くことを防ぐために、エリザベスカラーや防護服などの使用も有効です。

・減感作療法(げんかんさりょうほう)
減感作療法とは、アレルギー症状を起こす物質(花粉など)を、低濃度から少しずつ注射することにより、抵抗力をつけ症状を出にくくする治療法です。薬物療法が対症療法なのに対し、こちらの療法では自然治癒が見込めます。ただし、かゆみのある動物にさらにかゆみのある物質を入れながらの治療になりますので、かなり難しい治療でもあります。しかし、猫の場合は減感作療法治療薬ないため、この治療が行われることはほぼありません。

猫の花粉症の予防方法

猫の花粉症の予防方法

​​花粉症でもっとも大切なことは、アレルゲンを避けることです。人間の対策と同じく、愛猫が花粉と接する機会をなるべく少なくすることで、花粉症の症状を抑えるだけでなく、まだ花粉症を発症していない猫の場合でも、これから花粉症になるのを予防することができます。

換気する際は花粉の少ない時間帯を選ぶ

完全室内飼いの猫であっても、花粉症にならないという訳ではありません。花粉飛散の多い時間帯を、テレビやネットなどの花粉情報をチェックして把握し、なるべく花粉の少ない時間帯に換気をするようにしましょう。花粉の多い時間帯は、一般的に、昼前後(14時くらいまで)と夕方(18〜19時くらい)とされています。さらに、晴れて気温が高い日、空気が乾燥して風が強い日、雨上がりの翌日などは花粉が多いといわれています。このような日は換気を控えたり、布団や洗濯物を外に干すのを避けた方がよいでしょう。

空気清浄機を使用して室内の花粉を減らす

どのようなに室内に花粉を持ち込まないように注意しても、花粉が室内に入ってきてしまうことを完全に食い止めることはできませんが、空気清浄機を利用することで、室内に飛散している花粉を減らすことができます。室内の空気中に浮遊する花粉の除去において、近年使用されている空気清浄機はとても有用です。高性能な空気清浄機のエアフィルタはほとんどHEPAフィルタが採用されています。その性能は0.3μmの粒子を99.9%集塵できるものと規定されているので、10〜30μmの花粉は集塵できると考えていいでしょう。ただし、床に落ちた花粉は空気清浄機では集塵できません。掃除機や水拭きでよりしっかりと除去してあげましょう。

外出後はブラッシングやタオルで猫に付いた花粉を落とす

花粉を室内に持ち込まないためには、外出後にブラッシングや水で濡らしたタオルなどで猫についた花粉を落とすことが重要です。花粉が皮膚に付着するのを防ぐために、花粉がつきにくい素材の服を着させるという予防策もあります。また、飼い主が外出から帰宅する際にも、玄関で衣服をよく払って花粉を落とすことを忘れないようにしましょう。

こまめに室内を掃除する

花粉症を引き起こさないためには、とにかく花粉の暴露を避けることが大切です。家の中の掃除は、こまめに掃除機をかけるだけでなく、水拭きをするなどして徹底するようにしましょう。また、花粉は窓から入ってカーテンやブラインドなどにも付着します。特に静電気の起こりやすい冬から春にかけては、吸着率が高まる傾向にあります。掃除機で吸い取ったり、水拭きをしたり、洗濯をしたりといった対処が必要です。

花粉以外の猫のくしゃみ・鼻水の原因

花粉以外の猫のくしゃみ・鼻水の原因

猫にくしゃみや鼻水の症状があると「花粉症かな?」と考えてしまいがちですが、原因は花粉以外のアレルギーである可能性も考えられます。ここからは、猫の花粉以外のアレルゲンについて解説します。

ハウスダスト

くしゃみや鼻水の原因が花粉ではなく、ハウスダストである可能性もあります。特に季節性がなく、年中症状が出るような場合は、その可能性が高くなるでしょう。ハウスダストの場合も、花粉症と同様に、家の中を清潔に維持し、換気を意識してアレルゲンが家のなかに溜まらないような環境づくりが大切です。また、猫にはノミに対するアレルギーもよくみられるため、ノミが寄生していないか確認するようにしましょう。

食物アレルギー

発症率は低いものの、猫の食物アレルギーも存在します。原因としては青魚に反応を示すことがあり、猫用青魚缶によることもあるようです。食物アレルギーの場合は、原因となるアレルゲンを除去した食事や、低アレルゲン食を数週間与えて、症状が軽減するかどうかを観察します。早いと数日後には症状の改善がみられますが、1ヵ月程かかる場合もあります。

猫の花粉症と似た症状をもたらす病気

猫の花粉症と似た症状をもたらす病気

猫には花粉症と似たような症状をもたらす病気がいくつもあります。ここからは、猫特有の花粉症と間違えられやすい病気について見ていきましょう。

猫風邪

子猫や免疫力が低下した猫に少なくない猫風邪です。猫風邪とは、ウイルス感染や細菌感染などで咳やくしゃみ、鼻水、涙や目やになど上部気道感染症を起こす病気です。長期間体内に潜伏してから発症することがあるといわれており、症状が落ち着くまでそれなりに時間がかかります。また、ウイルスの種類によっては、症状が落ち着いた後も体内に残り続けて体力が低下したときにぶり返すこともあります。完全室内飼育の猫よりも野良猫に見られ、保護されたばかりの猫から家庭の猫に感染することもあります。子猫や高齢の猫では重症化することもありますので、これらの世代の猫で鼻水が見られたり、新たに保護した猫が家にいる場合は、動物病院で速やかに診察してもらうようにしましょう。重症化の予防には、定期的な混合ワクチンの接種もおすすめです。

猫クラミジア感染症

猫クラミジア感染症とは、クラミジアという病原体による感染症で、目やにを伴う結膜炎や角膜炎が特徴です。また、くしゃみやせきなどの呼吸器症状がみられることもあります。ごくまれに人にも結膜炎が感染することがあります。

クリプトコッカス症

クリプトコッカスという真菌(カビ)による感染症で、主に菌に汚染された土壌やハトの糞を吸い込むことで感染します。鼻水やくしゃみのほかにも、しこりができたり、神経症状があらわれる場合もあります。健康な猫の場合は症状が出ることは少ないのですが、外に出る機会のある猫や、免疫力・体力の落ちている猫は感染に注意が必要です。

鼻腔内腫瘍・ポリープ

猫の鼻のなかに腫瘍ができると、腫瘍による物理的な刺激や炎症によって、鼻水やくしゃみが出ることがあります。鼻の中の腫瘍は見えにくいため気付きにくく、大きくなって出血などの症状が出たり、顔が腫れたりして発見されることもあります。特に中年齢以降は腫瘍のリスクも上がってくるので、定期的に健康診断を受け、異常があれば早期に気付けるようにしておきましょう。

歯周病

高齢の猫の場合、歯周病によって鼻水が出ている可能性もあります。歯と歯肉の間の歯周ポケットに歯垢や歯石がたまることで、歯肉や歯を支える骨などの歯周組織に炎症が起こります。歯周病が進行するとお口から鼻につながる瘻管(ろうかん)ができて、鼻水やくしゃみといった症状が出てくることもあります。その他にも口臭がきつくなる、よだれを垂らすようになる、固いものを食べなくなるなどの変化がある場合は、動物病院で診察を受けるようにしてください。猫のお口の中の環境は歯周病になりやすい傾向があるので、歯磨きを習慣にできるよう、若いうちから練習しましょう。

まとめ

まとめ

いかがだったでしょうか? 猫にもアレルギー症状はあり、花粉のほかにもハウスダストや食物など、さまざまなアレルゲンが身近に存在します。また、花粉症のように見えても、実は別の病気だったということもありえます。愛猫の健やかな生活のためには、部屋を清潔に保つだけでなく、ちょっとした体調の変化にも気をつけてあげることが大切です。そして、いつもと違う症状を見つけたら、なるべく早く動物病院の診察を受けるようにしてくださいね。

参考文献