猫も人間と同じように口呼吸をすることがあります。そして、猫の口呼吸には健康のサインが含まれていることもあります。本記事では、猫の口呼吸について以下の点を中心に解説します。
- 猫の口呼吸とは
- 猫の口呼吸の症状とは
- 猫の口呼吸を見つけたときの対処法とは
猫の口呼吸について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
猫の口呼吸は異常?
猫は基本的に「鼻呼吸」をする生き物です。そのため、「口呼吸」は緊急を要する状態の可能性があります。
たとえば、猫がリラックスしている状態で口呼吸をしている場合、呼吸困難の前兆であることがあります。
また、口呼吸の状態が持続するか、ほかの症状(例えば、食欲不振、活動性の低下、異常な鳴き声など)が伴う場合は、速やかに獣医師の診察を受けることが重要です。
このように、猫の口呼吸は一時的な反応ではなく、深刻な状態を示唆している可能性があります。
猫の呼吸異常の症状
猫の呼吸異常は、飼い主にとって心配な症状の一つです。
正常な猫の呼吸は、安静時において1分間に20〜40回程度であり、睡眠中はさらに減少します。
しかし、猫が異常な呼吸を示す場合、その背後にはさまざまな原因が考えられます。
異常な呼吸の主な種類には、多呼吸(呼吸回数の増加)、肩呼吸(肩を使っての呼吸)、鼻翼呼吸(鼻の穴を大きくしての呼吸)、開口呼吸(口を開けての呼吸)があります。
なかでも、猫が口を開けて呼吸している場合は、とても苦しい状態であり、緊急の医療介入が必要なサインとされています。
異常呼吸の原因としては、呼吸器疾患や心疾患が主に挙げられます。
呼吸器疾患には、上部呼吸器疾患(鼻炎、外鼻孔狭窄など)や下部呼吸器疾患(気管虚脱、慢性気管支炎、猫喘息など)があり、これらは気道の閉塞や肺機能の低下により酸素の取り込みが困難になることで呼吸異常を引き起こします。
一方、心疾患では、心臓のポンプ機能の低下により体内の酸素循環が悪化し、呼吸困難を引き起こすことがあります。
猫の呼吸異常を示す場合、飼い主は早急に動物病院へ連絡し、診察を受けることが推奨されます。猫の呼吸数を測定するには、10秒間胸の動きを数え、その数を6倍することで1分間の呼吸数を算出します。
なかでも、開口呼吸や鼻翼呼吸は緊急性が高いため、迅速な対応が求められます。診断には、身体検査のほか、血液検査、レントゲン検査、エコー検査などが行われることがあります。
猫の呼吸異常は、ときに重篤な病気の兆候であることが多いため、飼い主は猫の日常の呼吸パターンを把握し、異常を感じたらすぐに獣医師の意見を求めることが大切です。
正確な診断と適切な治療により、猫の健康と快適な生活を守ることが期待できます。
猫が口呼吸をする原因
では、猫が口呼吸をする原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
鼻詰まり
鼻づまりが口呼吸につながる一因となるのは、猫の鼻が詰まることで正常な鼻呼吸が困難になり、代わりに口を使って呼吸をしようとするからです。
鼻づまりの原因には、感染症、アレルギー、腫瘍、異物の侵入などがあります。
これらの状態は、鼻の通り道を塞ぎ、鼻呼吸を妨げることで、猫が口呼吸に頼らざるを得なくなります。
鼻づまりによる口呼吸は、猫にとってストレスの多い状態であり、酸素の取り込みが効率的でなくなるため、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、猫の食欲は嗅覚に大きく依存しているため、鼻づまりは食欲不振にもつながり得ます。
ストレス
猫の口呼吸が見られる場合、その原因の一つとしてストレスが挙げられます。
猫はストレスや環境の変化に敏感であり、そのようなストレスが原因で口呼吸をすることがあります。
例えば、動物病院への訪問、車での移動、新しい環境への適応、ほかのペットや人との初対面など、猫が不安や恐怖を感じる状況は多岐にわたります。
ストレスを感じると、猫の体は「戦うか逃げるか」の反応を示し、結果として心拍数が上昇し、呼吸が速くなります。
通常、猫は鼻呼吸をしますが、ストレスによって呼吸が速くなると、より多くの酸素を取り込むために口呼吸に切り替えることがあります。
このような口呼吸は、猫が感じているストレスの度合いを示すサインとなり得ます。
ストレスによる口呼吸は一時的なものであることが多いですが、継続的なストレスは猫の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
呼吸器疾患
猫が口呼吸をする背後には、呼吸器疾患が一因として挙げられます。
呼吸器系の障害が口呼吸につながる主な理由は、肺や気管支など、酸素を取り込むための器官に何らかの障害が生じていることにあります。
これには肺炎、肺水腫、肺がん、気管支炎などが含まれ、これらの疾患は呼吸困難を引き起こし、猫が必要な酸素を十分に取り込めなくなるために口呼吸に頼るようになります。
また、呼吸器の病気は、空気の通り道である気管や気管支に炎症が起きたり、鼻腔内に腫瘍や異物が存在することで鼻呼吸が困難になり、結果として口呼吸を引き起こすことがあります。
心疾患
猫の口呼吸が見られる場合、その背後には心疾患が潜んでいる可能性があります。
心疾患による口呼吸は、心臓が血液を効率的に全身に送り出せなくなることに起因します。
これにより、体内の酸素供給が不足し、猫はより多くの酸素を取り込もうとして口呼吸に頼るようになります。
心疾患には、肥大型心筋症や心臓弁膜症などがあり、これらは心臓のポンプ機能の低下を引き起こします。
また、心疾患(猫では肥大型心筋症が多い)に併発する疾患として血栓塞栓症と大動脈血栓症があります。
血栓塞栓症は血栓が閉塞し、血流遮断が発生し、末梢の組織障害が起こるとされます。血栓塞栓症が直接酸素不足や口呼吸を引き起こすわけではないですが、血流遮断により血液が行き届かず、呼吸が困難になる可能性があります。
一方の大動脈血栓症は、肥大型心筋症による血流の乱れから血栓が形成され、それが大動脈を塞ぐことで発生します。大動脈血栓症は、心筋症に伴う合併症であり、事前の兆候なしに重篤な症状を引き起こすことが多いとされています。
心疾患による口呼吸は、猫が静かに休んでいるときでも観察されることがあり、これは疾患の進行を示唆している可能性があります。
横隔膜ヘルニア
猫の口呼吸が観察される際、その原因の一つとして横隔膜ヘルニアが挙げられます。
横隔膜ヘルニアは、横隔膜に穴が開き、通常は腹腔内にあるべき臓器が胸腔内に移動してしまう状態を指します。
この異常は、外傷や先天的な要因によって引き起こされることがあります。
横隔膜は胸腔と腹腔を隔てる筋肉の層であり、呼吸において重要な役割を果たしています。横隔膜が正常に機能することで、肺は適切に膨らみ、空気を取り込みます。
しかし、横隔膜ヘルニアが発生すると、腹腔内の臓器が胸腔内に侵入し、肺の拡張を妨げ、呼吸機能に影響を及ぼします。
結果として、猫は十分な酸素を取り込めず、酸素不足を補うために口呼吸に頼るようになります。
横隔膜ヘルニアによる口呼吸は、猫が静かに休んでいるときでも見られることがあります。
そのため注意が必要です。
熱中症
猫の口呼吸が見られる原因の一つに熱中症があります。
猫は汗腺が少なく、主に舌を使った発汗と呼吸による熱の放出で体温を調節しています。
しかし、極端な暑さの中ではこれらのメカニズムだけでは体温の上昇を抑えきれず、熱中症に陥るリスクが高まります。
熱中症になると、猫は過剰な体温を下げるために口呼吸を始めます。
この口呼吸は、より多くの空気を肺に取り込み、体内の熱を効率的に外に逃がす試みです。しかし、この状態は猫にとって不快であり、重度のストレスを引き起こすことがあります。
さらに、熱中症は脱水や電解質の不均衡を引き起こし、未治療の場合、臓器損傷や死に至ることもあります。
熱中症による口呼吸は、主に暑い日や直射日光の下、換気の悪い閉じた空間に長時間いる猫に見られることが多いです。
猫が口を開けて呼吸している、異常に興奮している、ぐったりしている、または反応が鈍い場合は、熱中症の可能性が高く、迅速な冷却と獣医師による治療が必要です。
運動後
猫の口呼吸が見られる理由の一つに、運動後の状態があります。
なかでも子猫や若い猫では、激しい運動やプレイの後に口呼吸をすることが観察されることがあります。
この現象は、猫が運動中に消費した酸素を補給し、体内で発生した熱を効率的に放出しようとする自然な反応によるものです。
運動によって猫の体温が上昇すると、猫は体温調節の一環として口呼吸を始めます。
なかでも子猫は活発でエネルギッシュなため、遊びや探索活動によって急速に体温が上昇し、それに伴い口呼吸に頼ることがあります。
運動後の口呼吸は通常、一時的なものであり、猫が休息し体温が正常範囲に戻ると自然に収まります。
しかし、運動後に猫が過度に息を切らしている場合や、口呼吸が長時間続く場合は、熱中症やほかの健康問題の可能性も考慮し、注意深く観察する必要があります。
フレーメン反応と口呼吸の違い
猫のフレーメン反応と口呼吸は、見た目が似ているものの、その背景にある理由と意味が大きく異なります。
猫が口を開けている行動には、これら二つの異なる現象があります。
まず、フレーメン反応は、猫が特定の匂い、主にフェロモンを感知したときに見せる行動です。
このとき、猫は口を半開きにして、上唇を少し持ち上げ、匂いをより深く感じ取ろうとします。
フレーメン反応は、猫がほかの猫や環境の匂い情報を収集し、社会的な情報を得るためのものであり、健康状態には直接関係がないとされています。
猫がこの反応を示しているときは、一点をじっと見つめながら、静かにその匂いを分析している状態です。
一方で、口呼吸は、猫が呼吸困難を経験しているときに見られる行動です。
通常、猫は鼻で呼吸をしますが、何らかの理由で鼻呼吸が困難になった場合、口を開けて呼吸するようになります。
これは、猫がストレスを感じている、熱中症になっている、または何らかの呼吸器系や心臓病による健康問題がある場合に見られます。
口呼吸は、猫が苦しんでいる可能性があるため、飼い主にとっては注意が必要なサインです。
フレーメン反応と口呼吸の大きな違いは、フレーメン反応が猫の正常な行動の一部であるのに対し、口呼吸は猫が何らかの問題を抱えている可能性があるという点です。
猫が口を開けている場合、その背景にある理由を理解し、必要に応じて適切な対応をすることが重要です。
フレーメン反応はとくに心配する必要はないとされていますが、口呼吸が見られる場合は、猫が健康上の問題を抱えている可能性があるため、動物病院での診察を検討することをおすすめします。
猫が口呼吸をしているときの対処法
猫が口呼吸をしている際の対処法は、その原因により変わります。
原因としては、下記のようなものがあげられます。
- 病気が原因の場合:心臓や肺の疾患、熱中症などが考えられます。これらの症状が見られた場合、速やかに動物病院での診察を受けることが重要です。
- ストレスが原因の場合:猫がストレスを感じている場合、まずは安静にし、ストレスの原因を取り除くことが大切です。例えば、動物病院への移動や新しい環境への適応などがストレスの原因であれば、猫を落ち着かせるための措置を講じます。
- 運動後の疲労が原因の場合:激しい運動後に口呼吸をしている場合は、一時的なものである可能性が高いです。猫が落ち着き、呼吸が正常に戻るまで様子を見ます。
- 鼻詰まりが原因の場合:鼻詰まりを引き起こしている原因に応じて、適切な治療が必要です。感染症やアレルギー、異物の侵入などが考えられるため、獣医師による診断が必要です。
- 熱中症が原因の場合:熱中症を起こしている場合は、迅速に体温を下げる対処が必要です。涼しい場所へ移動させ、体を冷やす措置を取り、速やかに獣医師の診察を受けます。
いずれの場合も、猫が口呼吸をしている状態が続く場合は、速やかに専門の獣医師の診察を受けることが最も重要です。
口呼吸で病院を受診した場合の検査
猫が口呼吸をして病院を受診した際に行われる検査は、その原因を特定し適切な治療をするために重要です。
検査には以下のようなものがあります。
- 身体検査:獣医師が猫の健康状態をチェックし、呼吸の異常が見られる部位を特定します。
- 血液検査:血中の酸素濃度やそのほかの指標を測定し、病気の有無や種類を判断します。血液ガス検査や心臓バイオマーカーの測定も含まれる場合があります。
- レントゲン検査:胸部のX線写真を撮影し、肺や心臓の異常を視覚的に確認します。肺炎や肺水腫、心臓の拡大などを確認します。
- エコー検査(心エコー):超音波を用いて心臓の動きや構造を詳細に観察し、心疾患の有無や種類を診断します。
- 心電図検査:心臓の電気的活動を記録し、不整脈などの異常を検出します。場合によっては24時間心電図(ホルター心電図)検査が行われることもあります。
- 気管支鏡検査:気管や気管支の内部を直接観察し、異物の有無や炎症、腫瘍などを確認します。必要に応じて気管支肺胞洗浄液検査を行い、末梢の気管支や肺の病気を調べます。
これらの検査は、検査結果によっては、さらに専門的な検査が必要になる場合もあります。
まとめ
ここまで猫の口呼吸について解説してきました。猫の口呼吸の要点をまとめると、以下のとおりです。
- 猫の口呼吸は、健康上の問題を示すサインであり、病気が隠れている可能性もある
- 猫の口呼吸の症状には、多呼吸や肩呼吸、開口呼吸などがあげられる
- 猫の口呼吸を見つけたときは、症状が続く場合は病院の受診が推奨される
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てますと幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。