犬のヘルニアには、椎間板ヘルニアや鼠径ヘルニア、臍ヘルニアなどがあります。いずれも体内の臓器や組織が本来あるべき位置から飛び出してしまう状態のことです。
発症する部位や原因によって症状や治療法が異なります。特に椎間板ヘルニアは、痛みや歩行障害、重症化すると麻痺を引き起こすことがあります。
本記事は、犬のぎっくり腰と椎間板ヘルニアとの違いをまとめました。
犬のぎっくり腰と椎間板ヘルニアの違い

犬のぎっくり腰と椎間板ヘルニアは、突然痛がったり、動きたがらなくなったりするなど、似た症状が見られます。似た症状が見られるため、飼い主が判断に迷うことがあります。
しかし、原因や病態、必要な診療はそれぞれ異なります。症状が軽く見えても、椎間板ヘルニアが隠れている可能性もあるため注意が必要です。
ぎっくり腰とは
犬のぎっくり腰は、急な動きや無理な姿勢などをきっかけに、腰や背中に強い痛みが生じる状態です。
突然キャンと鳴いたり、動きを止めたりするほか、歩きたがらない、階段や段差を嫌がる、背中を丸めるなどの様子が見られることがあります。
特に、激しい運動をした後や、ジャンプ、急な方向転換などの動作をした際には注意が必要です。
一見すると軽い症状に思えても、痛みの原因が筋肉や靭帯の負担だけとは限りません。神経や脊椎に関係する病気によって似た症状が起こる場合もあります。
足元がふらつく、足に力が入らない、立ち上がれないなどの症状がある場合には、早めに動物病院へ受診することが大切です。
痛みがある犬を無理に動かしたり、患部を強くマッサージするのは避けましょう。安静を保ちながら、できるだけ身体に負担をかけないように移動させることが重要です。
症状が続く場合や悪化している場合には、自己判断せず獣医師に相談しましょう。
椎間板ヘルニアとは

椎間板とは、背骨と背骨の間にクッションの役割をする組織のことです。
椎間板ヘルニアは、椎間板の内部の組織が飛び出したり変形したりすることによって、脊髄や神経を圧迫する病気です。
犬種として、ダックスフンドやウェルシュ・コーギー、フレンチ・ブルドッグなど、椎間板に負担がかかりやすい犬種は発症の可能性があります。
背中や首を痛がる、動きたがらない、歩き方がおかしくなる、足がふらつくなどが主な症状です。進行すると、立ち上がれなくなったりするケースもあります。
症状は、神経がどの程度圧迫されているかによって異なるため、軽い痛みだけで済む場合もあれば、重い麻痺につながることもあります。
安静や投薬によって症状の改善を目指す内科的治療、神経への圧迫を取り除くための手術が治療方法です。
どの治療法が適しているかは、症状や神経の状態を確認したうえで判断され、急に強い痛み、歩行が困難になった場合には、できるだけ早く動物病院で診察を受けましょう。
ぎっくり腰と椎間板ヘルニアの違い

犬のぎっくり腰と椎間板ヘルニアは、突然痛がったり、動きたがらなくなったりするなど、似た症状が見られるため、見ためだけでは判断しにくいです。
大きな違いは、痛みが起こる原因と神経への影響にあります。
ぎっくり腰は、急な動きやジャンプ、無理な姿勢などによって腰周辺の筋肉や靭帯に強い負担がかかり、急激な痛みが生じる状態です。安静で少しずつ症状が落ち着くケースもあります。
一方、椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板が変形したり飛び出したりして、脊髄や神経を圧迫する病気です。
椎間板ヘルニアでは、腰の痛みに加えて、足がふらつく、歩き方がおかしい、足に力が入らないなど神経症状が現れることがあります。
重症になると、立てなくなったり排尿が難しくなったりする場合もあるため注意が必要です。
犬のぎっくり腰の症状

犬のぎっくり腰は、突然強い痛みが生じるため、普段とは違う行動や動きが見られることがあります。
痛がって鳴く、動きたがらない、歩き方がぎこちない、背中を丸めるなど、症状の現れ方はさまざまです。
なかには一見すると軽い症状に見える場合もありますが、椎間板ヘルニアなど別の病気が原因となっている可能性もあります。
抱っこや腰を触られるのを嫌がる
犬のぎっくり腰では、腰や背中に痛みがあるため、抱っこをしようとしたり、腰を触ったりすると嫌がることがあります。
痛みのある犬は、普段は抱っこを嫌がらない犬でも、急に逃げようとしたり、鳴いたりする、身体をこわばらせたり、触られることを避けたりする様子も見られるでしょう。
無理に抱き上げたり、痛む部分を何度も触ったりすると症状を悪化させる可能性があるため、できるだけ安静に過ごさせることが大切です。
食欲がなくなる
犬のぎっくり腰では、腰の痛みによるストレスや不快感から、普段より食欲が落ちることが考えられるでしょう。
いつもは喜んで食べる食事に興味を示さなくなったり、食べる量が少なくなったりする場合もあります。
痛みが強いと動くこと自体を嫌がるため、食事の場所まで移動も避けるケースも見られます。
動きたがらない
犬のぎっくり腰では、腰や背中に痛みを感じることで、普段より動きたがらなくなることがあるでしょう。
立ち上がる、歩く、階段を上るなどの動作を嫌がり、同じ場所でじっとしている様子が見られる場合もあります。
無理に歩かせたり、遊ばせたりすると痛みが強くなる可能性があるため、できるだけ安静に過ごさせることが大切です。
お座りをしなくなる
犬のぎっくり腰では、お座りをする際に腰を曲げる動作が必要になるため、飼い主から声をかけられても痛みを感じ、立ったまま動かない、伏せることを避ける場合もあります。
急にお座りをしなくなった場合は、腰や関節などに痛みを抱えている可能性も考えられます。無理に座らせず、ほかの症状がないか注意して様子を見ることが大切です。
震えがある

犬のぎっくり腰では、腰や背中の痛みによって身体が小刻みに震えることがあり、立ち上がりや歩こうとした際に震えが見られる場合は、痛みが強くなっている可能性があります。
また、安静にしているにも関わらず震えが続いたり、落ち着かない様子の場合、震えは寒さや緊張などでも起こるため、決してぎっくり腰が原因とは限りません。
強い痛みや歩行異常などを伴う場合には、椎間板ヘルニアなどの病気も考えられるため、獣医師に相談をしましょう。
犬のぎっくり腰の原因

犬のぎっくり腰は、日常生活の何気ない動作をきっかけに、突然腰や背中に痛みが生じることがあります。
走る、ジャンプする、階段を上り下りするなどの動作だけでなく、滑って転んだり、急な方向転換も原因の一つです。
また、肥満や運動不足、加齢などによって腰への負担が大きくなる場合もあります。
犬がぎっくり腰になったときの注意点と対処法

犬がぎっくり腰になった場合、突然痛がったり動かなくなったりするため、飼い主も慌ててしまうでしょう。
しかし、無理に動かしたり痛む部分を触ったりすると、症状を悪化させる可能性があります。
まずは犬を安静にさせ、できるだけ腰に負担をかけないことが大切です。犬がぎっくり腰になったときに気をつけたいことや、自宅でできる対処法を解説します。
自己判断でのマッサージはNG

犬がぎっくり腰になったときは、痛みを和らげようとして腰や背中を自己判断でマッサージするのは避けましょう。
犬が急に腰を痛がる、動きたがらなくなったりすると、飼い主として少しでも楽にしてあげたいと考えるでしょう。
しかし、犬の腰の痛みにはさまざまな原因があり、単なる筋肉や靭帯への負担だけでなく、椎間板ヘルニアなどによって神経が圧迫されているケースもあります。
そのような場合、痛みのある部分をマッサージしたり、無理に身体を動かすことで、症状を悪化させるおそれがあります。
歩き方がおかしい、立ち上がるのを嫌がる、背中を丸めている、触ろうとすると嫌がるなどの変化が見られた場合は、無理に動かさず様子を観察しましょう。
痛がっている様子がある場合は、患部に触れたり揉んだりせず、できるだけ安静に過ごさせることが重要です。
移動させる必要がある場合も、腰に負担がかからないよう、できるだけ身体を安定させて運ぶことが大切です。
後ろ足に力が入らない、ふらつく、足を引きずる、立ち上がれない、排尿や排便がうまくできないなどの症状がある場合は、神経に関係する病気が隠れている可能性があります。
マッサージやストレッチ、運動を行う場合は、まず獣医師に状態を確認してもらい、症状に合った方法を指導してもらうことが大切です。
痛みが落ち着いた後のリハビリや筋力維持を目的として、獣医師の指示のもとで適切なケアを行うことで、腰への負担を減らし、再発予防につながる場合もあります。
まずは安静を優先し、必要に応じて動物病院を受診しましょう。
無理に動かさず安静にし抱っこも避ける
犬がぎっくり腰になったときは、腰に負担をかけないよう、できるだけ動かさず安静に過ごさせることが大切です。
散歩や遊び、階段の上り下りなどは控え、落ち着いて休める環境を整えましょう。
痛みがある状態で無理に抱っこすると、腰に負担がかかったり、痛みが強くなったりする可能性があります。
どうしても移動させる必要がある場合は、腰や背中が曲がらないよう体全体を支え、ゆっくり移動させるようにしましょう。
動物病院で適切な痛みの治療を受ける

犬がぎっくり腰になった場合は、痛みの原因を確認するために動物病院に受診しましょう。
ぎっくり腰だと思っていても、椎間板ヘルニアなど別の病気が原因となっている可能性があります。
獣医師による診察で状態を確認したうえで、必要に応じて痛みを抑える薬などを使用しましょう。自己判断で人間用の鎮痛薬を与えてはいけません。
痛みを我慢させるのではなく、適切な診療を受けながら安静に過ごすことが回復につながります。
獣医師の指示に従って安静にする
犬がぎっくり腰になった場合は、痛みが落ち着いてきても自己判断で運動を再開せず、獣医師の指示に従って安静に過ごすことが大切です。
散歩や遊び、ジャンプなどを早く再開すると、腰に負担がかかり、症状が悪化する可能性があります。
安静にする期間や運動を再開するタイミングは、症状や犬の状態によって異なるため、獣医師に確認しましょう。
自宅では、滑りにくい場所で過ごさせたり、段差や階段への移動を制限したりするなど、腰に負担をかけない環境を整えることも重要です。
犬のぎっくり腰の予防法

犬のぎっくり腰は、日常生活のなかで腰に急な負担がかかることで起こる場合があります。
そのため、普段から腰に負担をかけにくい環境を整え、適度な運動や体重管理を行うことが予防につながります。
また、滑りやすい床や高い場所からのジャンプなど、腰に負担がかかりやすい状況にも注意が必要です。
フローリングにはマットや絨毯を敷く
フローリングなどの滑りやすい床は、犬が歩いたり走ったりする際に足を滑らせ、腰や関節に負担がかかる原因になります。
特に、急に方向転換したときや立ち上がる際には、足が滑ることで身体に大きな負担がかかる場合があります。
犬がよく通る場所や過ごすスペースには、滑りにくいマットや絨毯を敷いて、負担を軽減して歩ける環境を整えましょう。
マットがずれてしまうと転倒につながるため、滑り止めを使用してしっかり固定も大切です。
階段や段差にはスロープを設置する
階段や高い段差の上り下りは、犬の腰に大きな負担がかかる動作の一つです。特に、勢いよく飛び降りたり、足を滑らせたりすると、腰や背中を痛める原因になることがあります。
ソファやベッドなどへの上り下りをする場合も注意が必要です。犬がよく利用する場所にはスロープを設置し、できるだけジャンプをさせない環境を整えましょう。
スロープを使用する際は、滑りにくい素材を選び、犬が負担を軽減して歩ける角度や幅を確保することも重要です。
適度な運動習慣で体重を増加させない
犬の体重が増えすぎると、日常的に腰や関節へかかる負担が大きくなります。適度な運動を習慣にして、適正体重を維持することが大切です。
散歩などを無理のない範囲で継続し、犬の年齢や体格、運動能力に合わせて運動量を調整しましょう。
急に激しい運動をさせると腰に負担がかかるため、徐々に運動量を増やすことがポイントです。食事量にも気を配り、適切な体重を維持することで、腰への負担軽減につながります。
まとめ

犬のぎっくり腰は、急な動作や滑り、ジャンプなどによって腰に負担がかかり、突然痛みが生じることがあります。
痛がる、動きたがらない、震える、お座りを嫌がるなどの症状が見られた場合は、無理に動かしたりマッサージしたりせず、安静が大切です。
症状によっては椎間板ヘルニアなど別の病気が隠れている可能性もあります。
日頃から滑りにくい環境を整え、階段や段差でのジャンプを避け、適度な運動と体重管理を心がけることで、腰への負担を減らすことにつながります。
異変が見られた際は自己判断せず、獣医師に相談しましょう。
参考文献

