犬が水をたくさん飲む原因は?症状や多飲の判断基準・対処法を解説

犬が水をたくさん飲む原因は?症状や多飲の判断基準・対処法を解説

「暑くもないのに水をたくさん飲むようになった」「器の水を1日に何度も補充している」といった状況に、心配になっていませんか。犬が水をたくさん飲む原因はさまざまです。

気温の上昇や運動量の増加で水を飲む量が増えるのは自然なことですが、普段と変わらないのに大量に水を飲む場合は注意が必要です。

この記事では、犬が水をたくさん飲む原因や多飲とされる基準、対処法について解説します。

愛犬の様子が気になり、不安を感じている飼い主さんに最後まで読んでもらえると幸いです。

犬が水をたくさん飲む原因や症状

水を飲む柴犬

犬が水をたくさん飲む原因となる疾患を教えてください。
犬が水をたくさん飲むようになる疾患としては、主に以下が挙げられます。
  • 糖尿病
  • クッシング症候群
  • 子宮蓄膿症
  • 腎臓病
  • アジソン病
  • 尿崩症
  • 肝不全
  • 心因性高カルシウム血症

犬の飲水と排尿のバランスは、脳と腎臓の働きによって調整されています。しかし、犬が水をたくさん飲む多飲の状態は、体内のホルモンバランスや腎機能に何らかの異常が発生している可能性が高いです。
例えば、糖尿病はインスリンというホルモンが不足して、血液中のブドウ糖濃度が高くなる病気です。血液中のブドウ糖が多くなりすぎると、腎臓が大量の水分と一緒にブドウ糖を排出しようとするため、尿の回数や量が増えます。
またクッシング症候群という内分泌系の疾患では、コルチゾールというホルモンが過剰に分泌され、多飲多尿を引き起こします。多飲多尿の症状は、体内の水分が尿として過剰に排出されるため、水分不足にならないように水を求める身体のサインです。
多飲多尿は病気の初期症状であることが多く、「最近よく水を飲むようになった」「尿の量や回数が増えた」と感じた場合は、早めにかかりつけの動物病院で診てもらいましょう。

疾患以外に犬が水をたくさん飲む原因や症状はありますか?
病気や疾患以外で犬が水をたくさん飲む原因としては、以下のものが挙げられます。
  • 食事の変化
  • 気温や室温が高い
  • 激しい運動の後
  • 薬の影響

食事の変化による飲水量の増加は、味の濃いおやつや塩分量が多い食事の摂りすぎによるものや、食事の切り替えが原因です。
塩分の摂りすぎは、体内の塩分濃度が上がるため、水をたくさん飲んでバランスをとろうとします。
また、手作り食やウェットフードからドライフードに切り替えた場合も、飲水量が増える傾向があります。手作り食やウェットフードは食事に含まれる水分含有量が多く、ウェットフードでは約70〜80%程度です。
一方、ドライフードの水分含有量は5〜10%程度と少なく、ドライフードに切り替えた場合飲水量が増加する傾向にあります。
ほかにも、気温や室温が高い場合や激しい運動をした後、薬の副作用などで一時的に飲水量が増える場合もあります。
このように、疾患だけでなく、犬が水をたくさん飲む原因はさまざまです。これらの理由が思い当たらないまま急に飲水量が急に増えた場合は、一度獣医師に相談してみましょう。

犬が水を飲み過ぎているか判断する基準と方法

水がおいしいダックスフント

犬の適切な飲水と排尿量を教えてください。
犬が1日に必要とする飲水量は、気温や運動量、食事の種類によって異なります。一般的には体重1kgあたり100ccが目安です。100cc以上は異常です。また、排尿量の目安としては体重1kgあたり50cc で、飲水量と排尿量のバランスが取れていることが、健康維持には欠かせません。
多飲・多尿と判断される基準量はどのくらいですか?
多飲多尿の基準は、1日の飲水量が体重1kgあたり100ml以上、 尿量が体重1kgあたり50cc以上です。
飲水が増える原因は、尿量の増加によるものです。尿の回数や1回の尿量の増加が観察のポイントとなります。
いつもよりも頻繁に排尿したり、1回に多量の排尿があったりする場合は、多飲多尿の可能性があります。普段の飲水量と排尿量が基準値以上になっていないか、日々注意して観察しましょう。
異常が続く場合は、早めに獣医師に相談することをおすすめします。
犬が飲む水の量や排尿量を測るにはどのようにしたらよいですか?
飲水量と排尿量を測る方法は、以下のとおりです。
  • ペットボトルや計量カップを使って飲水量を測る
  • ペットシーツやマナーパンツを使って排尿量を測る

飲水量を測る方法としては、500mlまたは2Lのペットボトルに水を入れ、犬に与える際はそのボトルから注ぐ方法が効果的です。
ペットボトルの水の減り具合を確認することで、犬が飲んだ水の量を正確に把握できます。
また、計量カップも同様に飲水量の把握が可能です。犬に与える水の量を計量カップで測り、記録をつけておくと飲水量がわかります。
注意点としては24時間単位で飲水量を測ることや、残った水を計量して正確に飲水量を計測するようにすることが大切です。
排尿量を測るには、ペットシーツやマナーパンツを活用する方法がおすすめです。尿を吸収したペットシーツやマナーパンツの重さから、それぞれの元の重さを引けば、純粋な尿量が計測できます。
この場合も24時間単位で計測し、1日だけでなく3日ほど続けて計測すると平均値がわかり、より正確な飲水量と排尿量が把握できます。

犬が水をたくさん飲むときの対処法・動物病院での対応

診察中のヨークシャーテリア

犬が水をたくさん飲む場合の対処法を教えてください。
犬が水をたくさん飲む場合は、水を切らさないように注意をしましょう。
多飲多尿の場合、体内の水分が尿として大量に排出されるため、水分不足に陥りやすくなります。水分不足になると脱水症状を起こしたり、熱中症になったりするなど、身体の機能が正常に働かなくなることがあります。
そのため、水の量は制限せず、いつでも水が飲める環境を整えることが大切です。
病院に連れて行く判断基準を教えてください。
病院を受診する目安は、飲水量と排尿量の基準値を確認することです。
24時間で体重1kgあたり100ml以上の飲水や50ml以上の排尿が確認された場合は、病院に行って検査を受けましょう。
このほか、多飲多尿以外の症状にも注意が必要です。例えば、糖尿病の場合、食欲があるのに体重が減少したり元気がなくなったりします。
また、クッシング症候群では、お腹の膨らみや左右対称の脱毛が特徴です。
さらに、普段できていたジャンプや階段の上り下りが困難になるなどの症状が現れることもあります。
このように、多飲多尿以外でも愛犬の身体や行動の変化に注意をして、気になる症状があれば早めに受診しましょう。
動物病院ではどのような検査や治療をしてもらえますか?
動物病院では、以下の検査を行い多飲多尿の原因を特定します。
  • 血液検査
  • 尿検査
  • 超音波検査
  • レントゲン

尿検査は、事前に採尿しておくと診察がスムーズになり、愛犬の負担も軽減できます。
動物病院で採尿する場合、カテーテルを入れたり膀胱穿刺(膀胱に針を刺したりする方法)によって採尿する場合があります。可能であれば自宅で採尿して持参するとよいでしょう。
自宅で採尿する方法としては、オスは排尿時に紙コップを、メスは紙皿を使って尿を受け取ります。採尿が難しい場合は、ペットシーツの裏面(ビニール面)を上にして敷き、そこに溜まった尿を採取すると簡単です。
採尿は朝一番の尿が適しているため、受診当日に採取した新鮮な尿を持参しましょう。

犬の多飲を予防する適切な水のあげ方を教えてください。
犬の多飲を予防する際に水分制限は厳禁です。水分制限は脱水を招く危険性があるので避けましょう。
また、水が古くなったり汚れていたりすると、犬の飲水意欲を低下させる原因になります。1日に2回は新鮮な水に取り替え、いつでも清潔な水が飲めるような環境を整えることが重要です。病院を受診する場合も水を切らさないように注意しましょう。

編集部まとめ

水分補給するボストンテリア

犬が以前より水をたくさん飲むようになったと感じたら、尿の回数や量も増加していることが考えられます。

その場合は、飲水量と排尿量の計測を行い、多飲多尿の状態になっているか確認しましょう。

また、「食欲はあるのに体重が減っている」「普段よりも元気がない」などの体調の変化にも注意が必要です。

たくさん水を飲む行動は病気のサインである可能性があります。

早期発見と早期治療が、愛犬の健康を守る重要なポイントとなります。「いつもと違う」と感じた場合は放置せず、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。

参考文献