犬のしつけやトレーニングの考え方は、時代とともに変わっているのが現状です。問題行動への取り組み方が進んだことで、今までよかれと思われてきたことが犬との関係を悪化させる原因になることもあります。本記事では、愛犬がなぜペットのしつけ教室へ通わせたのに、悪化してしまったのか、今回はその理由やしつけ教室に通わせる前に注意したいことを解説していきます。ぜひ、参考にしてみてください。
ペットしつけ教室で行われるトレーニング

ペットしつけ教室では、生後3ヵ月までの子犬や問題行動のある成犬など、さまざまな犬のトレーニングを行います。では、具体的にはどのようなトレーニングを行っているのでしょうか。ペットのしつけ教室でのトレーニングを紹介していきます。
基本的なトレーニング
基本的な犬のしつけとは、人間と犬が安全かつ楽しく暮らすためのルールを指します。人間と犬では文化が違うので、一緒に暮らすためには共通のルールが必要になります。そこで重要なのは、一方的にルールを押し付けないことです。
では、それを踏まえて基本的なトレーニングを紹介していきましょう。
- アイコンタクト
飼い主さんのほうをみてほしいときに、犬と目を合わせることをアイコンタクトといいます。見てほしいときに目が合う=聞こうとする意志があるということです。さまざまなことを教えていくうえで、一番大切なトレーニングになります。
- おすわり
オーソドックスで一般的にもよく知られている基本的なトレーニングです。犬の動きを止めることができるため、さまざまな場面で役に立ちます。
- ふせ
おすわりと並びよく教えられるしつけのふせです。ふせの体勢は立ち上がるのに時間がかかるため、おすわりより動き出しづらく、さらに犬にとってリラックスできる体勢なので、長時間待ってもらうときに役立ちます。
- まて
言葉通り、そのままの体勢で待つことを教えます。動きをいったん止め、飼い主さんからの合図があるまでそのまま待たせるしつけです。
ごはんのタイミングでよく使いますが、玄関から出るときや車の乗り降りなど、突発的に飛び出してしまう危険な場面でも役に立ちます。
- おいで
おいでと呼びかけることで、離れている犬を呼び戻すことができます。トラブルや事故の予防ができます。
犬のしつけ教室では、一般的な基本トレーニングです。
トイレやハウスのトレーニング
ペットのしつけ教室では、トイレやハウストレーニングの指導を受けることができます。トイレやハウストレーニングは、犬の暮らしにおいて欠かせないしつけです。
トイレのしつけは、粗相を減らし感染面での悪影響を防ぎます。また、ハウストレーニングでは、愛犬を落ち着かせ安らぎの居場所を確保する効果も期待できるでしょう。
- トイレのしつけ
- ケージで犬を観察し、トイレに行きたそうなタイミングでトイレにいく
- 排泄するタイミングの時間になったらトイレに連れていく
- 排泄しそうになったサインを見たらトイレに誘導する
- トイレシートで成功できたらおやつをあげる
ほかにも方法はありますが、基本的なトイレのトレーニングです。
- ハウストレーニングのしつけ
- おやつの匂いを犬に嗅がせてからハウスの奥におやつを置く
- 犬がおやつを食べるためにハウスの中に入った瞬間に「ハウス」と声をかける
- 犬がおやつに夢中なうちに扉を閉める
- 数秒たったら扉を開けて犬を褒める
こちらも基本的なトレーニングです。
問題行動別のトレーニング
犬の問題行動には、ほかの犬や人間に対してうなる、吠える、歯をむき出す、咬むなどの攻撃行動や、ほかの犬や人間、または特定の音や物体におびえるなどの不安行動、犬の要求を満たすために人間に対して催促して引っかいたり、吠えたり、とびついたりする要求行動なども問題行動のひとつです。
- 攻撃行動のトレーニング
飼い主さんの接し方の改善や、攻撃のきっかけになるものの排除などが主なトレーニングです。
- 不安行動のトレーニング
犬の不安行動(分離不安)は、一般的に3歳までに発症することが多いとされていますが、加齢や同居動物との死別をきっかけに発症することもあります。
トレーニングでは、犬の要求に応えない、犬との接触時間を家族が決めるなど、コントロールをして、最終的に長い時間やシチュエーションでも不安行動が起きないようにするのが一般的です。
- 要求行動のトレーニング
要求行動は、飼い主さんが犬の期待に応えてしまうと直りません。心を鬼にして要求に応えないトレーニングを行います。
また、トレーニングでは、おすわりやまてなどができたときにおやつを与える、犬が持ってきたおもちゃではなく、飼い主さん主導のおもちゃで遊ぶなど、要求に応えない態度をとりましょう。
犬のしつけ教室では、感情のままに叱ったり、体罰を与えることはしません。そういった行為は、犬に恐怖心を与えて、行動がエスカレートしてしまう場合があるからです。問題行動のしつけは、シビアな姿勢が求められます。
ペットしつけ教室で問題行動が悪化する原因

ペットのしつけ教室で矯正してもらうつもりが、さらに悪化してしまう原因がどこかにあるはずです。犬やトレーナー・方法などさまざまな観点からみていきましょう。
トレーニングの方法がペットに合っていない
犬の性格は年齢によってさまざまですが、しつけ教室で学ぶ内容に追いつけなかったり、しつけ教室の方針に合っていない場合もあります。
犬のしつけにはマニュアルやルールがありますが、基本的には愛犬の性格や行動パターンに合ったしつけを行うのが理想です。
問題行動の多い犬の場合、しつけというよりも訓練に近いので、技術力や経験豊富なノウハウを持ったドッグトレーナーに相談するようにしてみましょう。
トレーナーの経験やスキルが不足している
ペットしつけ教室では、トレーナーのスキルにばらつきがある場合もあります。次のようなトレーナーは、注意してしつけ教室が合っているのか検討してみましょう。
- コミュニケーション能力が低い
- 忍耐力が低い
- 犬と接するのが苦手
- 強い口調で叱る
- トレーナーとしての技術不足
また、ペットのしつけ教室のトレーナーには、次のようなスキルや経験があるか確認してもよいでしょう。
- 飼い主さんとのコミュニケーションも取れる
- 進歩状況の説明などの報連相を怠らない
- 犬とのコミュニケーション能力が高い
- 意志を強く伝える忍耐力
など、技術的なスキルはもちろん、飼い主さんや犬とのコミュニケーション能力を見学などで見ると、犬とトレーナーが合っているのかが分かるはずです。
飼い主さんとトレーナーで連携がとれていない
犬のしつけ教室で悪化していると感じたら、まずは担当のトレーナーに今の悩みを相談してみましょう。
しつけ教室ではできていることが家ではできないなど、飼い主さんの接し方や復習の方法に問題があるのかもしれません。しかし、悩みや問題をトレーナーに話していないと、連携が取れないまま次々と新しいトレーニングを始めてしまうこともあります。
トレーナーに現状の相談ができれば、悪化した原因を見つけて根気強く協力して直すことができます。今のトレーニングに犬がついて行けているか、合っているかなどトレーナーと話し合いをできる機会を作りましょう。
また、犬の性格や行動パターンをトレーナーに伝えて、飼い主さん自身も成長をすることが大切です。飼い主さんが無関心では、トレーニングもうまく進みません。トレーニングや訓練内容をその都度改良できるように、トレーナーとの連携は必要不可欠といえるでしょう。
ペットがストレスを感じている
ペットしつけ教室から帰ってきて問題行動がある場合、犬がストレスを感じている可能性があります。トレーナーに問題行動の報告をすること、何度か違ったプログラムやトレーニングにしても改善が見られない場合は、犬に合ったペットしつけ教室を探すことも検討するようにしましょう。
愛犬が、必ず今通っているしつけ教室に通わなければいけないわけではありません。悪化している原因が他でもないしつけ教室の可能性があるなら、ストレスを抱えながら通うのではなく、辞めることを視野に入れてもよいでしょう。
ペットが問題行動を起こす理由と対処方法

犬が問題行動を起こすには何か理由があるはずです。では、その理由と問題行動への対処法を解説していきましょう。
ペットが問題行動を起こす理由
犬が問題行動を起こす理由には次のような理由が考えられます。
- 飼い主さんの意志が理解できない
- 何かしらの理由でストレスを感じている
- 主従関係が逆になっている
- 自分のテリトリーを守ろうと攻撃的になる
また、以上の理由から考えられる問題行動は、吠える・噛むなどの攻撃行動、音や物に怯える不安行動、飼い主さんへの要求行動などがあります。無駄吠えやマーキング・マウンティングなど、飼い主さんや飼育環境にそぐわない行動が増えるでしょう。
こういった問題行動は、早い段階で直すこと、根気強く取り組むことが大切です。犬と飼い主さんが健やかに暮らすために大切なことなので、マナーとしてしっかりしつけましょう。
ペットの問題行動への対処方法
問題行動を解決しようと飼い主さんが叱りつけたり、体罰を加えたりすれば、犬にとって飼い主さんは怖い存在になってしまいます。さらに問題行動がエスカレートしてしまうこともあるので、叱る・体罰はしないでください。叱るのではなく、良いことをすれば褒めてあげることを繰り返すようにしましょう。
問題行動への対処法は、さまざまな刺激を不安に思わせないように慣らしてあげることです。また、問題行動が起きない環境づくりも大切です。
例えば、吠え始めたらどうするのかではなく、吠え始めない環境が大切ということです。しかし、自己流で問題行動を直してしつけるのは大変難しいことでもあります。本格的に問題行動に取り組みたいのであれば、しつけ教室のトレーナーや訓練士の教えを聞くことで早く対処できるでしょう。
ペットのストレスを軽減する方法
犬のストレスを軽減する方法をいくつか紹介していきましょう。思い当たるところや、今すぐできそうな方法があるかもしれません。ぜひ、試してみましょう。
ストレスの原因を確認する
犬は環境の変化を敏感に察知してそれにストレスを感じます。慣れ親しんだ散歩コースの変更や、暖かい地域から寒い地域へ引っ越し、最近工事で騒音があると、慣れない環境に緊張感や恐怖心が生まれてストレスを抱え込んでしまう可能性が高くなります。
また、子犬の頃から一緒にいた家族がいなくなった、家族に子供ができた、新しい犬を迎えたなど家族構成の変化も、犬にとってさみしさや孤独感に繋がりやすいので様子を見てあげましょう。
スキンシップを増やす
飼い主さんとのスキンシップ不足もストレスになります。遊ぶ時間が減ったり、留守番ばかりさせている場合は、その変化とさみしさが愛犬の負担になっているかもしれません。あまりもストレスを感じると、留守番中に部屋を荒らす、異常に吠える、元気や食欲がないなどのサインも出るので見逃さないようにしましょう。
できるだけ家にいる時間を増やして、コミュニケーションを取りましょう。家にいる時間を増やすことができない場合、スキンシップの時間をとって犬とのコミュニケーションを増やすようにします。
遊びや散歩の時間を増やす
犬のストレス解消には運動が一番効果的です。毎日は難しくても、休日や時間のある日に長めの散歩やドッグランに連れて行って、犬が満足するまで運動の時間を取ってあげましょう。雨などで散歩に行けないときは、室内でおもちゃ遊びをしてあげるだけでもストレス発散になります。
犬種や性格・年齢によっても適切な運動量が変わってくるので、犬に合った運動を選んで遊ぶことも大切です。
遊ぶ時間は、1回15分から最長でも30分程度までにします。その後はかならず数時間、休憩の時間をとります。生後1歳を超えた成犬でも、一度に遊ぶ時間は30分〜1時間程度に収めましょう。
自宅でトレーニングをやりすぎない
トレーニングの復習はペットしつけ教室でも大切なことで必ず行うべきですが、やりすぎると犬のストレスの原因になってしまいます。
トレーニングの復習は1日1回などと回数を決めて、それ以外は犬の自由な時間やスキンシップの時間などにに使ってあげましょう。そうすることで、犬にストレスをかけることなくしつけのトレーニングが効率的に進みます。
ペットしつけ教室に通う前に注意したい点

ペットのしつけ教室に通う前に、今の犬の年齢や性格に合ったものなのかを知っておく必要があります。また、ほかにもペットしつけ教室へ通わせる前に注意したいポイントを紹介しましょう。
ペットの負担を把握する
ペットしつけ教室では、犬に負担にならない程度のトレーニングが必要です。犬自体がしつけのストレスをどこまで感じているのか、人間が読み取ることは簡単ではありません。
しかし、明らかに萎縮したり、いうことを聞いていないのであれば、そのことを把握し分かりやすく犬に伝えるように努力しましょう。そうすることで、犬のストレスも軽減できます。
焦って何かをしようとせず、ストレスの原因や解決策を考えることが第一です。また、ペットしつけ教室を選ぶ際、犬の特徴を伝えることでトレーナーもしつけの方針が決めやすいので、飼い主さんも犬の特徴や性格を把握して相談するとよいでしょう。
ペットの性格や問題行動に適したプログラムかどうか
ペットのしつけ教室へ通う前に調べておきたいのが、ペットの年齢や問題行動・しつけを行いたいことに適したプログラムがペットのしつけ教室にあるのかということです。
子犬が通うパピークラスなどで学ぶことが、ほとんど出来ているのであれば、基本的なしつけは必要ないですよね。それならば、さらに上のトレーニングがあるしつけ教室を探しましょう。
また、成犬の問題行動で悩まされているのであれば、トレーニングよりも訓練士さんがよいのかなど、飼い主さんがさまざまなカテゴリから選んで事前に調べる必要があります。愛犬に適したプログラム・訓練士として優秀なトレーナーなど、いろんな目線からしつけ教室選びをしてみるのもいいでしょう。
事前準備がしっかりできているか
しつけを始める前に大切なのは、愛犬との信頼関係を築くことです。飼い主さんと犬の間に信頼関係があるほど、しつけもしやすく、指示も聞いてもらいやすいのでしつけがスムーズに進められます。
子犬を迎えたら、まずは愛情をいっぱい注ぐことが大切です。この場所は安心だと信頼してもらえるようにしましょう。ペットしつけ教室へ通う前から、優しい声掛けや毎日の散歩、スキンシップ、アイコンタクトなどを積極的におこなうようにするとのちのしつけ教室での覚えも早くなります。
はじめるのが早すぎると子犬でまだ理解ができないかもしれませんが、遅すぎるとストレスが大きくなって問題行動に繋がるかもしれないので、子犬であれば、社会化期に合わせてしつけ教室を選ぶ、成犬ならば犬の性格や問題行動に合った教室を事前に調べましょう。
まとめ
今回は、ペットのしつけ教室へ行っているのに問題行動が悪化してしまうケースや、事前に飼い主さんが知っておきたいことを解説してきました。
しつけ教室と一いでいっても、種類や方針もさまざまで、愛犬に合っているのかは簡単に分かるものでもありません。飼い主さんがしっかりリサーチした教室でも、犬に合わない教室では意味がありませんよね。
本記事を参考にして、ペットのしつけ教室選びをしてみてください。また、しつけ教室へ通わせたから良い子になって帰ってくるわけではなく、飼い主さんの観察や学ぶ姿勢も大切ということを理解してしつけ教室を選ぶとよいでしょう。