ペットと暮らしていると何かしらの事情で、ペットホテルへ預けることもあります。しかし、預けることでペットがストレスを感じないか、心配になる飼い主さんも少なくないでしょう。
預けるのが短期間でもストレスを強く感じると、ご飯を食べなかったり体調を崩したりするケースもあります。
ペットのストレスをできるだけ軽減するためには、事前の準備と適切な施設選びが重要です。どのような準備を行い、施設は何を基準に選べばよいのか、いくつかのポイントを解説します。
ペットホテルでペットがストレスを感じる原因
ペットホテルでストレスを感じるペットは珍しくありません。なぜペットホテルでストレスを感じてしまうのか、その主な要因を紹介します。
知らない場所で緊張するから
ペットのなかには、初めての場所ではリラックスできずに緊張する子もいます。家ではよく遊んだり警戒心なく眠ったりしていても、知らない場所ではなかなか同じようにはいきません。
緊張によるストレスの度合いは、ペットの性格や育ってきた環境によりさまざまです。
最初は戸惑いを見せたり、少しそわそわしたりする程度の緊張が軽い子もいれば、見た目に明らかな緊張を見せる子もいて、動かずに隅でじっと固まっているような子もいます。
ひどいストレスにつながるケースはまれですが、初めての場所ではペットが緊張しやすいことを覚えておきましょう。
初めて会う人・ペットがいるから
ペットの性格によっては、知らない人やほかの動物が苦手な場合もあります。苦手かどうかは一緒に過ごしている飼い主さんなら、普段の様子を見ていればなんとなくわかるでしょう。
臆病な子は知らない人や動物が近づくと、警戒したり逃げたりします。普段からほかのペットと過ごしたり、知らない人と触れ合ったりする機会が多ければ、苦手意識をもつことも少ないでしょう。
ペットホテルでは初めて会う人やほかのペットたちに囲まれて過ごすため、苦手な子にとってはストレスを受けやすい環境になります。
飼い主と離れて不安だから
普段の生活で常に誰かが家にいて、ペットだけで過ごす習慣がない場合は、飼い主さんと離れることに慣れていません。
特に犬は群れで暮らす習性があるため、仲間である飼い主さんと離れることに不安を感じやすい動物です。飼い主さんが庭へ出るだけでも落ち着かずウロウロしたり、不安で鳴き続けたりする子もいます。
逆に留守番をする機会が多い子は、飼い主さんがいなくてもある程度の時間は一人でも平気でいられます。
ただし、ペットホテルに長く預けられるのが初めてだと、留守番に慣れている子であっても多少の不安は感じるかもしれません。特に宿泊で夜を離れて過ごす場合は不安が増すでしょう。
いつもは留守番をしていても必ず帰ってくる飼い主さんが、なかなか現れないとなると捨てられたと勘違いしてしまう可能性もあります。
狭い・慣れない環境だから
ペットは狭いケージや慣れない環境で強いストレスを感じることがあります。
ペットを見ていると、家の中でもお気に入りの場所やリラックスして眠れる場所があるのがわかるでしょう。いつも過ごしている安全な場所だからペットは落ち着くのです。
環境が変われば安全かどうかもわからない場所で過ごすことになるため、落ち着かないのは当然です。
また、狭いケージは動き回ることができずにストレスの要因になります。特に遊びたい盛りの若いペットにとっては、大きなストレスになるでしょう。
ペットホテルではケージの中で過ごすのが一般的ですが、ペットが快適に過ごせる広さを確保することが理想的です。
ストレスが少ない施設の選び方
ペットホテルへ預ける際に、大切なペットにストレスを与えないかと、不安を抱えながら預けるのは避けたいものです。
ストレスを感じにくい施設を選ぶことで、不安が解消されるでしょう。どのような施設を選べばよいのかポイントを解説します。
経験豊富なスタッフがいる
施設選びにおいて、不安なく任せられる経験豊富なスタッフがいることは重要です。ペットのお世話に不慣れで、体調の変化にも気付けないようなスタッフばかりでは安心できません。
預け先のスタッフがどの程度の経験をもっているかは、ペットホテル選びの際に確認しておくことをおすすめします。ペットに関する資格をもっているかどうかや、ペットと接する姿勢も知っておきたいところです。
直接聞きづらいようなら、ホームページでの情報や利用者の声を参考にするのもよいでしょう。
広いスペースが確保されている
先述したように、狭いケージの中に長時間いるのはペットにとってストレスになります。環境省の発表した動物愛護法では、ペットホテルでのケージサイズは以下のように定められています。
寝床や休息場所に必要なケージの広さ | |
---|---|
犬 | タテ体長の2倍×ヨコ体長の1.5倍×高さ体高の2倍 |
猫 | タテ体長の2倍×ヨコ体長の1.5倍×高さ体高の3倍 ※棚を設け2段以上の構造とする |
最低でもこの基準を満たしているペットホテルでなければ、動物へ愛情と責任をもって接しているとはいえません。実際に見学に行くのがおすすめですが、行けない場合は電話で確認をしましょう。
ペットホテルのスタイルによっては、ケージに入れずに自由に動き回れる環境で預かってくれるところもあります。ほかの子と問題なく過ごせる子であれば、ケージフリーのペットホテルを検討するのもよいでしょう。
遊びが十分に用意されている
ペットは元気いっぱいに遊ぶことでストレスが発散できます。特に活発な年齢のペットには十分な遊びが欠かせません。
楽しく過ごすことでペットホテルによい印象をもち、次に預けるときも抵抗なく預けられるでしょう。
ペットホテルのなかにはドッグランを併設しているところもあります。普段から体力を使った遊びが好きな子なら、思いっきり走り回れるドッグラン付きのホテルを選ぶのもおすすめです。
十分に遊べる環境が用意されていることは、ストレスフリーに大きく役立ちます。
適切な温度設定がされている
過ごす場所が適切に温度管理されていれば、ペットに負担を与えずに済むでしょう。快適な温度が整った環境はリラックスでき、体調も崩しにくくなります。
逆に、温度管理が正しくされていない環境はペットにとって危険です。特に暑すぎる室内は、ペットの体力低下や熱中症につながります。
また、寒さに弱い種類のペットや高齢のペットにとっては、寒すぎる環境も辛いものです。温度設定はペットホテルにとって基本的なこととなりますが、夜間の温度設定がどうなっているかも確認をした方がよいでしょう。
ペットホテルでのストレスの対処法
ペットホテルでストレスなく過ごすためには、事前にできる限りの準備をしておくことが大切です。さまざまな対策をしておくことでペットがリラックスして過ごせるようになります。
どのような対策をすればよいか詳しく解説します。
預ける前に少しずつ飼い主との距離を作る
飼い主さんと離れていても不安を感じなくなるよう、少しずつ留守番の練習をしましょう。普段から一人で過ごすことのない子は、飼い主さんと少し離れただけでも不安を感じてしまいます。
家で留守番の機会をつくるのもよいですし、友人宅に預けてもよいです。最初は短い時間から練習を始め、徐々に時間を長くして何度も留守番を繰り返します。
離れていても飼い主さんは必ず戻ってくるという経験を積むうちに、離れている間も不安なく待てるようになります。ペットが安心して待てるようになれば、飼い主さんの不安も軽減されるでしょう。
ハウストレーニングをする
一般的なペットホテルでは、預けている間はケージに入って過ごすことが多いです。ほかのペットとのトラブルを避けるためにも、ケージで預かってもらうのが安心ですが、ケージに慣れていない子はストレスに感じます。
本来ケージで区切られた空間は自分のテリトリーだとはっきりとわかり、ペットにとって過ごしやすい場所であるはずです。慣れてしまえば他者が侵入してくることのない安全な場所として、リラックスして過ごせるようになります。
自宅にもケージを用意して、留守番の際にはケージの中で過ごす習慣を付けるとよいでしょう。
最初は閉じ込められたように感じて出たがるかもしれません。しかし、ケージの中で大好きなおやつやご飯を与えるうちに、ケージが好きになっていきます。
預ける前にケージに慣らせておくようにしましょう。
短時間から預けて慣らす
ペットホテルによっては、事前に短時間の預かりを推奨しているところもあります。慣れない環境で緊張しやすい子は、スタッフと相談して慣らせるために短時間の預かりを行うのがよいでしょう。
初めての場所でいきなり何泊もすると、ペットの精神状態に負担を与えかねません。ほとんどのペットホテルでは日帰りでの預かりも可能です。
最初は半日程度の短い時間で預け、その後は朝から夕方まで預けるなど、ペットの様子を見ながら時間を伸ばしていきましょう。
不安の少ない子でも可能であれば、最低でも1度は慣らせるための預かりをおすすめします。
お気に入りのおもちゃを持たせる
普段からペットが使っているお気に入りのおもちゃがあれば、それを預ける際に持たせてあげるとよいでしょう。おもちゃで遊ぶことで退屈しない時間を過ごせます。
長い時間をケージの中で一人で過ごすため、ストレスが発散できるアイテムが必須です。おもちゃを選ぶ際には誤飲の危険がなく、人の手を借りずに一人でも遊べるおもちゃを選んであげましょう。
飼い主やペット自身のにおいがついたものを持たせる
匂いに敏感な動物は、自分や大好きな飼い主さんの匂いがついたものがあると安心します。
ペットが洗濯かごの洗濯物を持ってきて、その上で寝ることもよく見られます。ペットは飼い主さんの匂いがついたものが大好きです。
ケージの中に敷けるような小さなブランケットやタオルなどを用意して、飼い主さんが数日抱えて寝れば匂いがつきます。それをペットホテルのケージに入れてあげれば、飼い主さんの匂いで不安なく眠れるでしょう。
ほかの人・ペットと交流させておく
ペットホテルへ行けば、知らない人やほかのペットたちに囲まれて過ごすことになります。ほかの人やペットを怖がらずに受け入れられれば、ペット自身の気持ちの負担が軽くなります。
日頃からほかの人やペットとの触れ合いを増やし、環境に慣れさせておきましょう。
積極的に外へ出て、ドッグランのような開放的な場所で人やペットと触れ合うのもおすすめです。
ペットホテルを選ぶ際にチェックするポイント
ペットホテルを選ぶ際に、いくつか事前に知っておきたいポイントがあります。以下の点をチェックしてみましょう。
- 散歩の有無やその際の安全対策はどのようなものか
- 24時間スタッフが常駐しているか
- 滞在中の様子を教えてくれるか
- 体調が悪くなったときの対応はどのようなものか
ペットホテルによっては滞在中に散歩をしてくれるサービスもありますが、その際にどのような安全対策が取られているのかを確認しましょう。車通りの少ない道路や歩道が広い場所を選んでいるか、リードが万一切れたときの対策として、2本リードにしているかなどを確認します。
また、ペットホテルによっては滞在中の様子をメールや動画などで送ってくれるところもあります。ご飯を残さず食べたか、トイレも問題なくできているかなど、情報がもらえれば不安がないでしょう。
ペットの体調が悪くなったときには、ペットホテルがどこまでの対応をしてくれるかも事前に確認しておいた方がよいでしょう。
病院に併設されているペットホテルでない限り、医療行為をお願いするのは難しくなります。代理で病院へ連れていくことはせずに、飼い主さんに連絡をするのみになることも珍しくありません。
ペットホテルを選ぶ際には、SNSに載っている利用者の声などがとても参考になります。実際に利用した方の声を聞いてみるのがおすすめです。
また、トラブル案件もしっかり確認しましょう。何かトラブルがあった際の対処マニュアルが用意されているかなどを確認しておくことも大切です。
さらに最近では、自宅にペットシッターを呼んでシッティングするサービスも増えています。知らない人や場所にストレスを感じ体調を崩しやすいペットの場合は、ペットホテル以外の選択肢も考慮するのもよいかもしれません。
ペットホテルを利用する際に準備するもの
ペットホテルへ預ける前には、忘れ物のないよう以下のものを準備しましょう。
- ワクチン証明書
- おもちゃや愛用のブランケット
- ペットフードやおやつ
- 服用している薬
- 緊急連絡先
ペットフードを持ち込み可にしているペットホテルが多くあります。
急にペットフードを変えるのはペットの負担になるため、体調面を考えると普段から食べ慣れているものをあげるのが理想です。おやつなども対応してくれるようなら持っていくとよいでしょう。
ワクチン証明書の提示を義務付けているペットホテルがほとんどです。当日忘れて預けられないことがないよう、事前にしっかりと準備をしておきましょう。
ペットホテルから帰宅後のケア
普段よりも長く飼い主さんと離れることは、ペットにとっても寂しいことです。精神的な負担で食欲が落ちていないか、体調に変化はないかなど、帰宅後はいつも以上に注意して観察しましょう。
ストレス発散のためにたくさん遊んであげて、楽しい感情で満たしてあげるのがよいケアになります。遊んだ後はゆっくりと休める環境を整えてあげましょう。
帰宅後は頑張ったペットにご褒美と感謝の気持ちを込めて、ペット最優先で過ごしてあげるのがおすすめです。
まとめ
ペットホテルを利用する際には、極力ペットにストレスがかからないようにしたいものです。ストレスを軽減するためには、事前の準備やペットホテル選びが重要です。
大切なペットを不安なく預けられるよう、飼い主さん自身がペットの習性やペットホテルについて知識を身に付ける必要があります。ペットがストレスを感じずに過ごせるようになれば、今後緊急で預けなければならないときにも役立ちます。
紹介した対処法や選ぶ際のポイントを参考にして、トレーニングや失敗のないホテル選びをしましょう。
参考文献