動物病院の受診はペットにとってストレス?ストレスを感じているときのサインや対策を解説

動物病院の受診はペットにとってストレス?ストレスを感じているときのサインや対策を解説

ペットが家族として長く健康に暮らすために動物病院への受診は大事ですが、注射や治療に対して苦手意識があるとストレスになる場合があります。過度にストレスがかかると、検診がスムーズに進まなかったり、免疫力が低下して予防注射や治療の副反応が出るなどのリスクが高まるため対策が必要です。こちらの記事では、動物病院を受診する際にペットがストレスを感じるタイミングについてお伝えしたうえで、ストレスを感じているサインや対策について解説します。ペットが初めて動物病院を受診する際など、ぜひ参考にしてみてください。

動物病院を受診する際にペットがストレスを感じるタイミング

動物病院を受診する際にペットがストレスを感じるタイミング

言葉で説明できないペットにとって動物病院は「痛いことをされる場所」と認識していることもあり、苦手意識を持つ子もいます。ここでは、動物病院を受診する際にペットがストレスを感じるタイミングについて解説します。

待ち時間

動物病院の待ち時間は、薬品やほかのペットのにおいが充満しており、嗅覚の鋭い動物にとっては大きなストレスになります。また、待合室では原則キャリーに入っていなければならないため、普段キャリーに入る習慣がないペットには負担になりやすいです。

不安や恐怖心を感じると、そばにいる飼い主さんに助けを求めて鳴いたり暴れたりするペットもいます。待合室で近くにいるペットが鳴いたり暴れたりすると、その声や空気感に刺激されて、静かにしていたペットの心拍数や呼吸が速くなることもあります。

移動時

動物病院への移動時は、車や電車の騒音やキャリーに入れられている窮屈感がストレスになります。散歩のために毎日外を歩いていれば、外の環境音に慣れているため大きな心配はいりません。一方でほとんど家で過ごしているペットは、聞き慣れない・見慣れない刺激が負担になりやすいです。普段はおとなしい子でもキャリーの中で暴れ回ったり大きな声で鳴いたりするだけではなく、嘔吐・排泄をしてしまうこともあります。また、普段より元気がなくなることもあります。

診察中

動物病院での診察中は、注射や医療器具などに恐怖感を覚えると威嚇して暴れたり震えたりして、スムーズな診察を妨げます。暴れたときに、壁やほかの医療器具にぶつかると、大切なペットが怪我をするリスクもあるため注意が必要です。

普段から飼い主さん以外と交流がないペットは、動物病院の獣医が身体に触れただけでも強いストレスを感じやすいです。診察中の嫌な記憶は、次回以降に動物病院を受診する際のトラウマにもつながります。

ペットが見せるストレスを感じているサイン

ペットが見せるストレスを感じているサイン

ペットが動物病院でストレスを感じたときに、飼い主さんがすぐに気づいてあげるためには小さな変化を見落とさないことが大切です。ここでは、ペットが見せるストレスを感じているサインを4つ解説します。

普段と違った行動を取る

ストレスを感じると、いつも静かな子が大きな声で鳴く・攻撃的に威嚇する、いつも甘えん坊な子が飼い主さんと距離を取ろうとするなど、普段と違った行動を取ります。必ずしも興奮して暴れるわけではなく、静かに身を隠すように縮こまることもあり、行動変化には個体差があります。

ペットの変化は、普段一緒に生活している飼い主さんがもっとも気づいてあげられる部分です。とくに待合室では、においや環境、過去の記憶からストレスを感じているサインを出すことが増えるため、よく観察しましょう。

トイレの失敗などが起きる

普段は上手にトイレに行ける子でも、非日常空間で失敗してしまうことがあります。動物病院にはたくさんの種類の動物が集まるからこそ、においに反応してマーキングしたくなったり、不安や恐怖心からコントロールできなくなったりします。

トイレの失敗はストレスサインの一種のため、叱らずに優しく落ち着かせてあげることが大切です。待合室を汚してしまったら、すぐに獣医やスタッフに伝えてきれいにしましょう。キャリーの中で失敗することもあるため、予備のペットシートを持参しておくと安心です。

攻撃的になり、怯えた様子を見せる

突然攻撃的になったり怯えるようになったりしたら、何かに対して防衛本能や恐怖心が芽生えている可能性が高いです。動物病院の場合は、知らないにおい、キャリーでの待機時間、ほかのペットの鳴き声、獣医の触診など非日常的な体験が増えます。これらの刺激は、ペットにとって大きなストレスになるだけではなく、本能的に「自分の身に危険が及ぶのではないか?」と警戒心が強くなりやすいです。

普段は誰にでも温和で優しい性格のペットでも、攻撃的になって飼い主さんが声をかけてもパニックが続く場合があります。逆にいつもは人懐こくても、ぶるぶると震えたり小さく鳴いて飼い主さんにも近寄ろうとしなくなることがあります。拒絶反応を見せているペットを無理やり診察しようとすると、飼い主さんとの信頼関係に傷がつく恐れもあるため注意が必要です。

体調の変化が現れる

過度なストレスが慢性化すると、食欲の低下、下痢や嘔吐などの消化管トラブル、活動レベルの低下、脱毛、発作などの発病リスクが高まります。動物病院を受診したあとに、体調の変化が現れたら、ストレスによる影響が推測されます。自宅に戻れた安心感で、一時的な体調不良は回復する可能性が高いため、一旦は様子をみてみましょう。動物病院に戻ってしまうと、さらにストレスを与えてしまう恐れがあります。

動物病院でのストレスがペットに与える影響

動物病院でのストレスがペットに与える影響

予防接種や病気・怪我の治療のため、動物病院への通院は欠かせませんが、同時に大切なペットにはストレスによる悪影響も懸念されます。ここでは、動物病院でのストレスがペットに与える影響について解説します。

診察や診断が難しくなる

動物病院でストレスを感じているペットは、普段は見せないような行動を起こす可能性があるため、スムーズな診察や診断が困難になります。動物病院の獣医が身体を触ろうとした際に、噛みつこうとしたり暴れ回ったりすると、医療ミスにつながります。興奮して心拍数や呼吸が速くなると、適切な診断ができなくなるため、ペットの健康状態を判断できません。

治療への抵抗が強くなる

動物病院のにおいや雰囲気にストレスを感じると、注射や医療器具に強い拒絶反応を見せる可能性があります。病気や怪我の治療だとしても、ペットにとっては「嫌なことをされている」と認識してしまうため、防衛本能が芽生えやすいです。過度な拒絶反応がでると適切な治療ができずに、治療が長引いたり状態が悪化したりする恐れがあります。

次回の通院が難しくなる

予防注射や治療で苦手意識が芽生えると「動物病院=嫌なことをされる場所」と学習してしまい、動物病院を見ただけで強いストレスを感じてしまいます。動物病院に行くときだけキャリーを使っている場合、そのキャリーを見ただけで逃げ回ったり暴れたりする子もいます。動物病院での苦手意識は克服することがむずかしく、飼い主さんが辛抱強くリラックスさせてあげるための工夫が必要です。

動物病院を受診する際にストレスを軽減する方法

動物病院を受診する際にストレスを軽減する方法

大切なペットが動物病院でストレスを抱えないためには、事前準備やリスク対策が欠かせません。ここでは、動物病院を受診する際にストレスを軽減する方法を解説します。

病院に慣れさせる

動物病院では、獣医から身体のあちこちを触診されたり、注射や医療器具で治療をされたりします。レントゲンを撮るために、手足を伸ばされたり患部の反応を見るために軽い力で押されたりすることもあります。

触られることに慣れてないペットにとって、無理やり触られる行為は恐ろしく、大きなストレスになるのは当然です。そのため、ご自宅で普段からペットと触れ合う機会を作るようにしてください。耳、足、手、お腹など全体をゆっくり触って、可能であれば口を開けさせる練習をして、診察に対する苦手意識を減らしましょう。

移動用キャリーに慣れさせる

動物病院に行くときだけキャリーを使っている場合、キャリーを見ただけで「嫌なことをされる」と学習してしまうため、恐怖心や緊張につながります。そのため、楽しいことをするときにもキャリーを使うようにしてください。

普段からペットが自由に出入りできるような場所にキャリーを置いたり、キャリーに入れて散歩に連れていったりすると、自然とキャリーに慣れてきます。狭い空間自体が苦手な子もいるため、安全な場所だと認識してもらえるようにキャリーに入る機会をたくさん作りましょう。

ペットをリラックスさせるアイテムを活用する

動物病院では薬品やほかのペットのにおいが充満しているため、普段から使っているおもちゃやブランケットを持っていくことで不安や恐怖心を和らげられます。また、普段使っている大きめのブランケットでキャリーを覆うことで視界が狭くなるため安心できるペットもいます。

動物病院に協力してもらい、事前に届けていたおやつを来院のタイミングにあげてもらうことで「ここではおやつがもらえる」とポジティブなイメージを持ってもらいやすいです。ペットの性格や好みにあわせてアイテムを選びましょう。

飼い主さんができる動物病院でのストレス対策

飼い主さんができる動物病院でのストレス対策

動物病院の苦手意識が克服できていなくても、飼い主さんが落ち着いて行動することで、ストレスをできる限り抑えることができます。ここでは、飼い主さんができる動物病院でのストレス対策を解説します。

ほかの動物との距離を保つ

動物病院では、ほかの動物と一定の距離を保つことで、ペットの緊張感や恐怖心を軽減させられます。とくに猫や小動物など、ほかの人間や動物と触れ合う機会が少ないと、においや鳴き声に敏感です。

できるだけほかの動物と離れた場所に座って、キャリーにブランケットをかけてあげると、視界が遮られて身を潜められている安心感を抱きやすいです。犬と猫で待合室を分けている動物病院もあるので、ペットに適した環境を用意しましょう。

飼い主さんが落ち着いた態度でいる

獣医や動物看護師だけではなく、普段は信頼関係ができている飼い主さんに対しても攻撃的になる場合があります。この反応は、言葉を話せない犬の感情表現なので、飼い主さんは叱るのではなくて優しくなだめてあげてください。予防注射や治療などで痛みが伴う際にも、そばで声をかけ続けてあげるだけでも恐怖心を和らげられます。

ペットが不安そうにしていると冷静でいられなくなってしまう飼い主さんは、あえて診察に立ち会わない選択をとってみてもよいでしょう。診察室に飼い主さんがいると、助けを求めようと鳴いたり暴れたりするものの、獣医と動物看護師だけの空間になると、急に静かに診察を受けられるようになるペットもいます。すべてのペットに効果があるとは限りませんが、獣医と相談しながら試してみてください。

大好きなおやつを持参する

動物病院での診察や治療を無事に終えたら褒めてあげましょう。褒めるときにおやつがあると、ペットにとっては報酬になるため、またがんばろうと前向きになれる子もいます。

ただし、待合室でおやつをあげる際には、必ず獣医やスタッフから許可をもらうようにしてください。ほかのペットがにおいに反応して興奮してしまうと、大きな声で鳴いたり奪おうと攻撃したりする恐れがあります。恐怖心や不安を和らげるためにおやつは効果的ですが、あげるタイミングと場所は選ばなければなりません。

お気に入りのおもちゃやブランケットを用意する

動物病院に行く際には、キャリーの中に普段から遊んでいるおもちゃやいつも寝るときに使っているブランケットを入れてあげましょう。動物は人間以上に嗅覚が優れているので、自分のニオイがついたアイテムがあるだけでも安心できます。大きいブランケットがあれば、その中に潜って身を潜められるため、よりストレス軽減につながります。

かかりつけ医と投薬の相談をする

猫については、不安や攻撃性をどうしても緩和できず病院の受診が遅れ、病気の摘発

、治療が難しくなってしまうケースが多いことも事実です。猫に関しては安全に不安を  和らげたり、少し眠くなる薬を来院まえに服用してもらい、円滑に検査、治療を進める

方法もあります。かかりつけの獣医さんと事前に相談してみましょう。

まとめ

まとめ

動物病院の受診では、ほかのペットのにおいや病院の雰囲気にストレスを感じやすいです。言葉が通じないからこそ、ペットの不安や恐怖心による小さな変化に気づいて対策することでストレスを軽減できます。日常生活でも動物病院の苦手意識を克服できるトレーニングがあるので、ペットのペースにあわせて取り組みましょう。

参考文献