猫がくしゃみや鼻血を出している場合に考えられる原因や対処法について解説します!

猫がくしゃみや鼻血を出している場合に考えられる原因や対処法について解説します!

猫がくしゃみや鼻血を出すと心配になりますよね。これらの症状は、単なるアレルギーや風邪だけでなく、感染症や鼻腔内の異常、さらには外傷などが原因となることもあります。

本記事では猫がくしゃみや鼻血を出している場合に考えられる原因や対処法について以下の点を中心にご紹介します。

  • 猫のくしゃみと鼻血について
  • 猫のくしゃみや鼻血が止まらないときの対処法
  • 動物病院を受診する目安

猫がくしゃみや鼻血を出している場合に考えられる原因や対処法について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

猫のくしゃみと鼻血について

猫は、どのようなときにくしゃみや鼻血が出るのでしょうか?それぞれ解説します。

猫のくしゃみとは

猫のくしゃみとは、鼻腔内に異物や刺激が入った際に体が反射的に行う防御反応です。

くしゃみをすることで異物を体外へ排出し、呼吸器の健康を保つ働きがあります。猫も人間と同じく、一時的なくしゃみであれば大きな問題にはなりません。

しかし、くしゃみが頻繁に続いたり、鼻水や鼻血を伴ったりする場合は注意が必要です。

猫の鼻血とは

猫の鼻血とは、鼻腔や鼻腔周辺の血管が傷つくことで出血する症状のことです。鼻血は、外傷によるものから体内の病気に起因するものまで、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。

鼻血の出方が少量で一時的であれば心配ないこともありますが、頻繁に起こったり、大量に出血したりする場合は注意が必要です。

また、くしゃみとともに鼻血が出る場合には、鼻腔内の異常や病気の可能性も考えられるため、猫の鼻血を見つけた際には、原因を特定し対処することが重要です。

猫がくしゃみや鼻血を出す原因

上記では、猫のくしゃみと鼻血についてお伝えしました。
ここでは、猫がくしゃみや鼻血を出す原因について詳しく解説します。

猫風邪などの感染症

猫のくしゃみや鼻血の原因として多く見られるのが「猫風邪」と呼ばれる上部気道感染症です。これは猫カリシウイルス、猫ヘルペスウイルス、猫クラミジアなどの感染によって引き起こされます。

●猫カリシウイルス感染症
猫カリシウイルスは口、鼻、目の粘膜を通じて感染し、くしゃみや鼻水、咳といった風邪の症状を引き起こします。
特徴的なのは、口腔内や舌に潰瘍ができることで、痛みを伴いよだれや食欲不振を招くことがあります。また、肺炎や関節炎を引き起こすこともあり、特に関節炎の場合は歩行に異常が見られることがあります。

●猫ヘルペスウイルス感染症
別名「猫ウイルス性鼻気管炎」とも呼ばれ、くしゃみや鼻水、発熱、結膜炎、角膜炎などが症状として現れます。
猫ヘルペスウイルスは体内に潜伏するため、一度感染すると治癒することはなく、ストレスや免疫力の低下によって再発する可能性があります。

●猫クラミジア感染症
猫クラミジアは、細菌によって引き起こされる感染症で、特に結膜炎を伴うことが多いとされています。
くしゃみや鼻水、目やにといった症状が見られ、感染が進行すると肺炎に発展することもあります。

猫風邪は複数の感染症が同時に起こることもあり、症状が重なることも珍しくありません。

クリプトコッカス症

クリプトコッカス症は、クリプトコッカスというカビ(真菌)による感染症で、主にハトの糞や土壌などに存在する菌を吸い込むことで感染が起こります。

猫に感染した場合、くしゃみや鼻水、鼻血、目やにといった呼吸器症状が現れることが多いとされ、鼻にしこりができることや目の周辺が腫れることもあります。

また、感染が神経系に達した場合、意識障害や運動障害、視神経に影響が出ることもあり、重篤化するケースもあります。

クリプトコッカス症は、人畜共通感染症の一つとされますが、健康な成猫が発症することはほとんどないといわれており、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスなどの感染によって免疫機能が低下した猫が感染しやすくなります。

予防のためには、免疫力を保つことや感染リスクの高い場所への接触を避けることが重要です。

アレルギー性鼻炎

猫も人間と同じく、ハウスダストやタバコの煙、花粉、ダニなどのアレルゲンに反応してアレルギー性鼻炎を起こすことがあります。

これらのアレルゲンが体内に取り込まれることで、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目やにといった症状が現れます。特に花粉が原因の場合、スギやヒノキ、イネ、ブタクサなどによる季節性のアレルギー反応を引き起こすこともあります。

また、呼吸器症状に加えて皮膚にかゆみが生じるケースもあり、体を頻繁に掻いたり舐めたりする様子が見られることがあります。アレルギー性鼻炎によって鼻腔内の粘膜が炎症を起こすことで、鼻血が出やすくなることもあるため注意が必要です。

その他

感染症やアレルギー以外にも、猫のくしゃみや鼻血の原因として考えられるものには、異物の吸引、歯牙疾患による鼻炎、腫瘍、副鼻腔炎などがあります。

異物が鼻腔内に入ると刺激を引き起こし、くしゃみや鼻血の原因となります。また、歯の病気が進行すると上顎の骨や鼻腔にまで炎症がおよび、鼻水やくしゃみが起こりやすくなります。さらに、鼻腔内や副鼻腔に腫瘍ができることも、くしゃみや鼻血を引き起こす原因となります。

特に、副鼻腔炎は鼻の奥にある副鼻腔と呼ばれる空洞部分の炎症を指します。ウイルス性鼻炎が副鼻腔炎を引き起こすことが多く、副鼻腔が複雑な構造をしているため、治療薬が患部まで届きにくいことが問題です。

発症すると、くしゃみや膿が混じった鼻水が出るほか、症状が進行すると毛細血管が傷つき鼻血が出ることもあります。さらに、副鼻腔炎が悪化することで嗅覚が低下し、食欲不振につながることもあります。

猫が鼻血を出す原因

さらに猫が鼻血を出す原因を掘り下げて以下に解説します。

猫風邪などの感染症

先述しましたが、猫の鼻血の原因としてよく見られるのが、「猫風邪」と呼ばれる感染症です。くしゃみが頻繁に起こることで鼻の粘膜が傷つき、毛細血管が破れて鼻血が出ることがあります。

特に猫風邪が長引いたり、重度の鼻炎を伴ったりする場合は、鼻血を引き起こすリスクが高まります。また、細菌感染が併発することで炎症が悪化し、鼻血の症状が見られることも少なくありません。

健康な成猫であれば感染しても無症状であることが多い傾向にあるものの、免疫力が低下している猫では症状が悪化しやすいため、注意が必要です。

鼻腔の腫瘍

鼻腔内腫瘍とは、猫の鼻のなかに腫瘍が発生する病気で、特に高齢の猫で見られることが多い傾向にあります。腫瘍が進行すると鼻腔内の粘膜や血管が傷つき、ダラダラと鼻血が出ることも少なくありません。

鼻腔内腫瘍の多くは悪性であり、なかでもリンパ腫の可能性が高いとされています。次いで、上皮系悪性腫瘍(癌腫、腺癌、扁平上皮癌)などが見られます。

腫瘍が大きくなり骨を侵食することで症状が悪化するケースもあり、鼻腔内での出血が続く原因になることもあります。

歯周病

歯周病は猫に多く見られる病気で、特に高齢の猫では発症率が高く、3歳以上の猫の8割程度が歯周病を抱えているとされています。

歯周病が進行すると、歯石がびっしり付着したり、歯茎から血がにじんでいる様子が確認できるほか、目の下あたりが腫れたり、皮膚に穴が開いて膿が出るケースもあります。これらの症状が見られる場合、歯周病による炎症が鼻腔にまで達し、鼻血が出ている可能性が高いと考えられます。

さらに、歯周病が悪化すると「口鼻瘻管(こうびろうかん)」と呼ばれる状態になることがあります。これは、歯槽骨が溶けてしまい、口腔と鼻腔がつながってしまう病態です。口鼻瘻管が形成されると、くしゃみや鼻水、鼻血などが頻繁に見られるようになります。

基礎疾患

猫の鼻血は、さまざまな基礎疾患によって引き起こされることもあります。特に内科系の病気によって鼻の粘膜や血管が影響を受けると、鼻血が出やすくなることがあるため注意が必要です。

●高血圧
高血圧になると、鼻の粘膜にある毛細血管が切れやすくなるため鼻血を引き起こしやすくなります。特に慢性腎臓病は進行すると、多飲多尿、嘔吐、口臭、食欲不振などの症状が現れます。

●肝臓病
肝臓は血液を固めるために必要な血液凝固因子を作る役割を持っています。しかし、肝機能が低下するとこの因子が十分に生成されなくなり、血を固める作用が弱まって出血しやすくなることがあります。

●糖尿病
糖尿病では、血液中の糖分が多いとされているため血液がドロドロになり、血流が悪化し血管がもろくなります。このため、わずかな刺激でも鼻血が出やすくなることがあります。

●甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、高齢猫に多く見られます。過剰なホルモンの影響で血圧が上昇し、鼻血が出やすくなることがあります。

血液異常

人間と同じく猫も、血液を固めて出血を止める「凝固」の働きによって、怪我や出血を抑えています。

しかし、中毒や遺伝的な疾患、免疫異常などの原因で血液の凝固機能が正常に働かなくなると、出血が止まりにくくなり、さまざまな場所から出血が起こることがあります。特に鼻血や吐血、血尿、血便といった症状が現れた場合は注意が必要です。

また、血液異常によっては皮膚に紫色のあざや点状出血が見られることもあります。代表的な血液異常として以下のものが挙げられます。

●赤血球増加症
赤血球増加症とは、血液中の赤血球の数が異常に増加する病気です。赤血球が増えすぎることで血液の粘度が高まり、血流が悪化し高血圧を引き起こすことで鼻腔内の毛細血管が破れやすくなり、鼻血が出やすくなります。

●血小板減少症
血小板減少症は、血液を固める役割を担う血小板が極端に減少する病気です。血小板が不足すると、傷ができた際に出血が止まりにくくなるほか、鼻血や歯茎からの出血、皮膚の点状出血、血尿や血便といった症状も見られることがあります。

猫のくしゃみや鼻血が止まらないときの対処法

ここまで、猫がくしゃみや鼻血を出す原因について詳しく解説してきましたが、くしゃみや鼻血が止まらないときの対処法も把握することが大切です。

くしゃみの場合

猫のくしゃみが止まらない場合、まずは原因を特定し、適切な対応を取ることが重要です。多頭飼育の場合、感染症によるくしゃみである可能性があるため、ほかの猫への感染を防ぐために隔離を行うことが推奨されます。

また、アレルギーが原因でくしゃみが続く場合には、空気清浄機を使用して部屋の空気を清潔に保つことがおすすめです。加湿器を使って適度な湿度を維持することで、粘膜の乾燥を防ぎ、くしゃみを軽減させる効果も期待できます。猫がいる部屋でタバコや香りの強いアロマ、芳香剤などを使用することは避けましょう。

さらに、くしゃみが同じ状況下で発生する場合には、環境の改善が鍵となります。例えば、猫砂や掃除後にくしゃみが増える場合は、粒子が細かい猫砂を避けることや、無臭タイプの製品に変更することが大切です。

症状の記録も重要なポイントです。くしゃみの頻度や状況を動画で記録し、獣医師に見せることで診断がスムーズになります。診察時には、生活環境や使用している製品(猫砂や消臭剤など)についても詳しく伝えましょう。

病的なくしゃみが疑われる場合には、ご家庭での対処に限界があるため、速やかに動物病院で診察を受けることが大切です。

鼻血の場合

猫の鼻血は、原因が多岐にわたるため家庭での対処が難しく、一刻も早く動物病院で診察を受けることが重要です。特に大量の鼻血や繰り返し出血する場合は緊急性が高い可能性があるため、速やかに対応することを心がけましょう。

まず、鼻血が出た際には飼い主さんが落ち着くことが大切です。気が動転してしまいがちですが、冷静に鼻血や鼻水を優しく拭き取りましょう。ティッシュややわらかい布を使用し、強くこすらないように注意してください。また、鼻血以外の症状が見られるか確認することも重要です。

動物病院での診察時に役立つよう、次の情報をメモしておくとよいでしょう。
鼻血が出た時刻、鼻血の色や量、その他に見られる症状の有無を詳細に記録することで、獣医師が原因を特定しやすくなります。また、鼻血を拭き取る前の状態を写真に残しておくことも推奨されています。

動物病院へ連れて行く際は、なるべく猫を興奮させないように注意してください。無理に触ったり大きな音を立てたりせず、猫が落ち着いた状態で移動できるよう工夫しましょう。

動物病院を受診する目安

猫の鼻血は、ほとんどの場合、何らかの病気が原因で引き起こされています。たとえ猫が元気そうに見えても、原因を明確にするために動物病院を受診することが推奨されます。

明らかに怪我が原因で鼻血が出ている場合でも、内部に損傷がある可能性があるため注意が必要です。また、注射や薬によって出血を止めたり、傷口の感染を予防したりする処置を受けることが重要です。

特に高齢の猫で以下の症状が見られる場合、鼻腔内腫瘍の可能性があります。

  • ダラダラと鼻血が出続ける
  • くしゃみや鼻水が頻繁に出る
  • いびきをかくようになった

さらに、以下の症状が見られる場合は血液凝固異常の可能性もあります。

  • 皮膚にあざができる
  • 吐血や血尿が見られる
  • 出血量が多い

これらの症状は輸血が必要になることもあるため、早急に受診する必要があります。

まとめ

ここまで猫がくしゃみや鼻血を出している場合に考えられる原因や対処法についてお伝えしてきました。
猫がくしゃみや鼻血を出している場合に考えられる原因や対処法の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 猫のくしゃみや鼻血は異物や病気が原因の場合があり、特に鼻血が頻繁に出るときは注意が必要
  • 猫のくしゃみや鼻血が止まらないときは、まず原因を特定して対応することが大切
  • たとえ猫が元気そうに見えても、原因を明確にするために動物病院を受診することが推奨されている

猫のくしゃみや鼻血は、猫風邪やクリプトコッカス症、アレルギー、歯周病、鼻腔腫瘍などさまざまな原因で引き起こされます。また、複数の疾患が併発している可能性もあります。特に高齢猫や免疫力が低下している猫は重症化しやすいため、早めに動物病院で診察を受けることが大切です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献