犬の消化器疾患 | 病気の種類・原因・獣医師に相談するタイミングを解説

犬 消化器疾患

急に愛犬が嘔吐や下痢を発症してしまうと、心配になる方も多いのではないでしょうか。犬には、嘔吐や下痢などの症状が多くみられる傾向にあります。

しかし、嘔吐や下痢を何度も繰り返したり何日も症状が続いたりしている場合、愛犬が消化器疾患を発症しているかもしれません。

そもそも、犬の消化器疾患とは一体どのような病気なのでしょうか。本記事では犬の消化器疾患に該当する病気の種類・原因・獣医師に相談するタイミングについて詳しく解説します。

すでに症状がみられていて心配している、愛犬の健康を守るために知識をつけておきたい方は、ぜひ参考にしてください。

犬がかかりやすい消化器疾患の種類・症状・原因

犬がかかりやすい消化器疾患の種類・症状・原因

犬の消化器疾患とはどのような病気ですか?
では、犬がかかりやすい消化器疾患の種類・症状・原因を説明する前に、そもそも犬の消化器疾患がどのような病気であるのかを解説しましょう。
消化器系は、口から摂取した食べ物を分解して消化・吸収する働きを持つ器官の集合体を指しています。

  • 食道
  • 小腸
  • 大腸

主に上記の臓器を全て合わせて消化器と呼ばれています(消化器系にはほかに口腔・肛門・肝臓・胆嚢・膵臓が含まれます)。一般的には食生活が肉食であるほど、消化管が短く単純な形状です。
消化器疾患を発症すると、食べ物が消化管を通過する速度が変化したり、適切な消化が妨げられます。

犬がかかりやすい消化器疾患にはどのような種類がありますか?
犬の消化器疾患は、消化器官でみられる病気の総称になります。犬の消化器疾患の中でも、発生が多いことで知られているのが「慢性腸症」と呼ばれる疾患群です。
一過性の胃腸炎と異なり、消化器症状が慢性的に続く特徴があります。ほかにも、消化器疾患には以下のような種類があります。

  • 急性胃腸炎
  • 抗菌薬反応性腸症
  • 腸リンパ管拡張症
  • 巨大食道症
  • 大腸炎
  • 大腸がん
  • 膵炎
  • 膵外分泌機能不全
  • 小腸吸収不良
  • 食物過敏症

消化器は食べ物から摂取した栄養素を使って、組織の構築・修復・エネルギーを獲得するために欠かせない臓器です。消化器に何かしらの支障をきたせば、上記のようなさまざまな問題が生まれてしまう傾向にあります。
慢性化すれば大腸がんや糖尿病など重い病気に発展するリスクが高くなるため、早期発見と早期治療に努めましょう。

消化器疾患が疑われる症状について教えてください。
消化器疾患は消化器官でみられる病気の総称であるため、食道・胃・小腸・大腸によってさまざまな症状が現れます。よくみられる症状は以下の通りです。

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 元気消失
  • 腹部膨満
  • 腹鳴
  • 腹痛
  • 体重減少
  • 多飲多喝
  • 脱水症

普段から愛犬の行動を把握しておけば、すぐに気づける症状も多くあります。愛犬の行動に違和感を覚えたら、すぐに動物病院へ連れていきましょう。
症状が重たくなると、酸塩基平衡異常・電解質平衡異常・栄養不良を引き起こす場合があるため、注意が必要です。

消化器疾患を発症する主な原因を教えてください。
消化器疾患を発症する主な原因として挙げられているのは、腸内細菌の急激な変化によるものです。腸内細菌の急激な変化は、食事や感染症によるものが多いとされています。食事であれば、過食・食事内容の急激な変更・食物アレルギー・食物不耐性です。
感染症であれば、細菌・ウイルス・腸内寄生虫が腸内細菌に影響すると示唆されています。食事や感染症以外にも、消化器疾患を発症しやすい犬種もいます。消化器疾患を発症しやすい犬種は以下の通りです。

  • グレート・デーン
  • ジャーマン・シェパード
  • ゴールデン・レトリバー
  • コリー
  • トイ・プードル
  • パピヨン
  • チワワ
  • ポメラニアン

上記の犬種を飼っている方は、食事や感染症に十分留意してください。また、ストレスを溜めないことも大切です。人間と同様に犬もストレスによって病気につながることが多くの研究で報告されています。愛犬にストレスがかかっていないか、ストレス発散を定期的にできているか心がけてください。

犬の消化器疾患の検査・治療

犬の消化器疾患の検査・治療

消化器疾患が疑われる場合はどのような検査を行いますか?
問診で消化器疾患が疑われる場合には、まず腹部膨満や腹鳴がないか腹部聴や触診で検査を行う傾向にあります。動物病院によって一般検査内容は異なりますが、主に行われる検査内容は以下の通りです。

  • 尿検査
  • 検便
  • 血液検査
  • レントゲン検査

検査をスムーズに行うためには、愛犬がいつ頃から体調を崩しているのか・下痢や嘔吐の回数や頻度はどれくらいかを獣医師にしっかり伝えるように留意しましょう。
嘔吐物や排便を病院に持っていくことも有効です。ただし、なるべく時間が経っていないものに限ります。持っていく際には、密閉できるものに収納しておきましょう。
動物病院や検査内容にもよりますが、検査にかかる時間は1~2時間が一般的です。時間に余裕を持って動物病院に受診することを心がけてください。

消化器疾患はどのような治療を行いますか?
消化器疾患の治療は、薬物治療や食事管理療法を用いる傾向にあります。食事管理療法によって腸内細菌を安定させ、消化器官の働きを正常に戻していく方法です。犬の栄養管理師がサポートしてくれる動物病院もあるため、可能であれば相談することをおすすめします。
水分摂取や栄養管理を徹底して継続していけば、消化器疾患は多くの場合は数日で治る病気です。刺激が少ない・分解と吸収がしやすい・臓器の働きをサポートする食事内容を心がけてください。しかし、原因が寄生虫や細菌性・ウイルス性、消化管の腫瘍などの場合は、食事療法だけで改善が難しいことがあります。
まず、しっかりと検査を行い、その結果に基づいて治療を進めることが大切です。例えば、寄生虫が原因の場合は駆虫薬を投与し、検便を行い駆虫されたことを確認する必要があります。また、標準的な治療を行っても改善が難しい場合は、超音波検査・MRI・腸の組織検査へと進みます。

獣医師に相談するタイミング

獣医師に相談するタイミング

犬の消化器疾患を獣医師に相談するタイミングを教えてください。
消化器疾患が疑われる症状がいくつかみられる場合には、速やかに動物病院に受診しましょう。
嘔吐だけだったり下痢だけだったりする場合には、獣医師に相談してください。ただし、犬は痛みを我慢したり弱みを人間に隠したりする習性があります。
早期発見・早期治療につなげるためにも、愛犬の行動に違和感を覚えたらすぐ獣医師に相談することをおすすめします。
早期発見のためにどのような点をチェックすればよいですか?
愛犬の普段の行動をチェックしておくことで、早期発見につなげられます。早期発見のためにチェックする具体的な内容は以下の通りです。

  • 排便の量・回数・状態
  • 食事の量・回数
  • 習慣の行動を把握
  • 突然に元気が消失していないか

上記の内容を日常的にチェックすることを心がけてください。言葉でコミュニケーションを取ることが難しいからこそ、普段のスキンシップや愛犬の行動を把握しておくことが大切です。

犬が下痢・嘔吐をしたらすぐに病院に行くべきですか?
犬の消化器疾患を獣医師に相談するタイミングでも先述している通り、犬は言葉でコミュニケーションを取ることが難しく、痛みを我慢したり弱みを人間に隠したりする習性があります。
これまで違和感を隠した結果、下痢や嘔吐を引き起こしてしまった可能性も大いに考えられます。すぐに動物病院に受診したほうがよいでしょう。
慌てずどのような状態で下痢・嘔吐をしたのか、獣医師に伝えられるように留意してください。
症状が軽度の場合、いつも通りの食事を与えてもよいですか?
消化器疾患の症状が軽くても、症状が出ている時点で食事を見直す必要があります。なぜなら、食事が合っていないことが懸念されるからです。
消化器疾患の症状が軽い場合は、量をいつもより減らして腸への負担を軽減しましょう。いつも食べているドライフードを少しふやかしてもよいです。元気や食欲があっても便の状態が悪くしかも継続したり、量便と軟便を繰り返している場合は食事があっていない可能性があります。この場合は、食事を見直す必要があります。まずはどのような食事を与えるべきか、獣医師に相談することがおすすめです。
近年は、ペットフードや犬専用のサプリメントのサンプルを提供している動物病院も多いです。愛犬の好きな食事を意識しつつ、栄養管理できる食事に切り替えることを心がけてください。

編集部まとめ

編集部まとめ

これまで、犬の消化器疾患に該当する病気の種類・原因・獣医師に相談するタイミングについて詳しく解説しました。

消化器疾患は多くの犬にみられる病気ですが、水分摂取や栄養管理を徹底して継続していけば、消化器疾患は多くの場合は数日で治る病気です。

刺激が少ない・分解と吸収がしやすい・臓器の働きをサポートする食事を心がけてください。

また犬には我慢する習性があるため、嘔吐や下痢などの症状がみられた場合には、すぐに動物病院へ受診することを心がけましょう。

大切な家族の健康を守るためにも、普段から愛犬とスキンシップしながら食事量や運動量に変化がないかチェックすることが大切です。

参考文献