猫の口内炎とは?口内出血の症状も?原因や治療法も併せて解説!

猫 口内出血

猫にも人間のように口内炎ができる場合があります。そして口内炎から口内出血が起こる可能性もあります。
本記事では猫の口内炎について、口内出血の視点も含めてご紹介します。

  • 猫の口内炎の症状とは
  • 猫の口内出血とは
  • 猫の口内出血を防ぐためには

猫の口内出血を理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

猫の口内炎とは

猫の口内炎は、口腔内の粘膜に炎症が生じる病気です。
後述するように赤く腫れた潰瘍ができ、出血や痛みを伴うことが多く、食欲不振などの症状を引き起こすとされています。

猫の口内炎の原因

猫の口内炎には、下記のような原因が挙げられます。

外傷

猫の口内炎は、外傷が引き起こすケースも少なくありません。
外傷による口内炎は、猫が硬いものを噛んだり、誤って薬品を摂取したり、高温のものに触れたりすることで口腔内に傷がつくことから始まります。

口腔内は多くの細菌が存在する環境であり、通常は健康な粘膜が細菌から体を守っています。
しかし、外傷によって粘膜が損傷すると、細菌が傷口に侵入しやすくなり、感染を引き起こして炎症が生じることがあります。

感染症

猫の口内炎は、感染症が直接的な原因となることもあります。

感染症による口内炎は、主にウイルスや細菌による感染が引き起こします。
なかでも猫カリシウイルス、猫ヘルペスウイルス、猫免疫不全ウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症などが、口内炎を引き起こす主な感染症とされています。

これらのウイルスや細菌は、猫の免疫システムに影響を与え、口腔内の健康状態を悪化させる可能性があります。
免疫力が低下すると、本来ならば抑制されるはずの口腔内の細菌が過剰に増殖し、炎症を引き起こすことがあります。

また、感染症によっては、直接的に口腔内の粘膜を攻撃し、炎症や潰瘍を引き起こすこともあります。

不衛生な口腔内

猫の口内炎は、不衛生な口腔環境が原因で発生することもあります。

口腔内が不衛生になる主な理由は、適切な口腔ケアがされていないこととされています。
歯石や歯垢が蓄積すると、歯石や歯垢によって細菌の温床となる可能性があります。
細菌は、口腔内の粘膜に炎症を引き起こし、結果として口内炎が発症する場合があります。

歯石や歯垢が蓄積すると歯肉に炎症を起こし、やがては歯肉炎や歯周病を引き起こす可能性があります。
さらに進行すると口内炎を引き起こす可能性もあります。

また、口腔内の細菌が過剰に増加すると、それ自体が直接的な炎症の原因となるとされています。

免疫力の低下

猫の口内炎の発症は、免疫力の低下も重要な要因の一つです。

免疫力が低下すると、猫の体はウイルスや細菌などの外部からの攻撃に対して脆弱になりやすいとされます。
なかでも、猫免疫不全ウイルス感染症や猫白血病ウイルス感染症など、免疫系に直接影響を与える病気は、口内炎のリスクを高める可能性があります。

猫の体は免疫力が正常に機能している場合、口腔内に常在する細菌や新たに侵入した病原体を防げるとされています。
しかし、免疫力が低下すると、細菌や病原体が増殖しやすくなり、炎症や感染症を引き起こす可能性が高まります。

さらに、免疫系の異常は、自己免疫疾患の形で現れることもあります。
口腔内の粘膜も攻撃の対象となりうるため、炎症や口内炎を引き起こすことがあります。

猫の口内炎の症状

猫の口内炎には、さまざまな症状が現れる可能性があります。
下記、それぞれの症状をご紹介します。

口内出血

猫の口内出血は、口内炎の進行により口腔内の粘膜や歯肉が炎症を起こし、腫れてただれることで発生するとされています。
この炎症は、前述した歯周病や歯肉炎などの口腔疾患、外傷、またはウイルス感染症などによって引き起こされることがあります。
なかでも、歯周病は歯と歯肉の間に歯垢や歯石が蓄積し、細菌が増殖することで炎症を引き起こし、最終的には出血する可能性があります。

痛み

猫の口内炎の痛みは、口腔内の粘膜や歯肉に炎症が生じることで引き起こされるとされています。

粘膜や歯肉の炎症は、前述した歯周病、外傷、感染症などさまざまな原因によって発生し得ます。
なかでも、歯周病は歯垢や歯石が蓄積し、細菌が増殖することで歯肉を含む口腔内の組織に炎症を引き起こし、炎症が痛みの主な原因となる場合があります。

猫の口内炎に関与するウイルスや細菌による感染症も、免疫力の低下を招き、結果として炎症や痛みを引き起こすとされています。
また、口内の外傷が直接的な炎症を誘発し、痛みを生じさせることもあります。

痛みが強い場合には奇声をあげることもあり、奇声は口内炎が進行しているサインとも考えられます。

多量のよだれ

猫の口内炎で多量のよだれが見られるのは、口腔内の炎症による痛みや不快感が原因とされています。

痛みや不快感により、猫は自然と唾液の飲み込みを避けるようになり、結果としてよだれが増えるとされています。

さらに、口内炎が進行すると、口腔内で出血が起こり、血が混じったよだれが出ることもあります。
この状態は、猫にとってかなりストレスが大きく、食欲不振や脱水症状を引き起こすリスクも高まる可能性があります。

口内炎による多量のよだれは、猫が口腔内の痛みや不快感によって正常な唾液の管理ができなくなっているサインであり、症状の進行を示唆しています。

口臭

猫の口内炎に伴う口臭は、口腔内の炎症や感染症による細菌の増加が主な原因とされています。

口内炎は、前述した歯肉、舌、頬の内側などの粘膜に炎症が生じる状態を指し、粘膜の炎症が細菌の増殖を促します。
なかでも、歯周病が原因で発生する口内炎では、歯垢や歯石に細菌が繁殖しやすくなり、歯垢や歯石が口臭の直接的な原因とされています。

さらに、猫の口内炎は免疫力の低下や外傷、さまざまな感染症によっても引き起こされることがあります。

こういった状態では、通常口腔内に存在する細菌のバランスが崩れ、異常な細菌の増加が口臭を引き起こす可能性があります。
また、炎症や感染によって生じる組織の損傷や死滅した細胞も、口臭の原因となり得ます。

食欲の低下・脱水

猫が口内炎を発症すると、痛みや不快感が原因で食事の摂取が困難になり、食欲低下や脱水の直接的な原因となる可能性があります。

口内炎による痛みは、猫が食事を避けるほど強烈であり、食べものを咀嚼する際に患部に触れることで痛みが増すため、猫は食事を避けがちになります。
また、猫は水分の大部分を食事から摂取するため、食欲が低下すると水分摂取量も減少し、脱水症状を引き起こすリスクが高まる可能性もあります。

猫の口内炎の診断

猫の口内炎の診断には、複数のアプローチが取られます。

まず、獣医師は口腔内の視診を行い、歯肉や粘膜の炎症、腫れ、出血の有無を確認します。口腔内の視診の段階で、口内炎の典型的な症状が見られることが多いようです。
しかし、肉眼だけでは判断しきれない場合や、症状の原因を特定するために、さらに詳細な検査が必要になることがあります。

なかでも、歯肉口内炎が進行している場合や、口腔内腫瘍の可能性がある場合は、麻酔下での生検が行われることがあります。
生検により、炎症の程度や腫瘍の有無、そのほかの口腔内疾患を正確に診断することが可能とされます。
また、猫エイズや猫白血病ウイルスなど、口内炎を引き起こす可能性のある感染症の検査も重要です。

猫エイズや猫白血病ウイルスの感染症は、治療のアプローチを変えなければならない場合があるため、血液検査によって確認されます。
さらに、猫の口内炎がほかの全身疾患、例えば腎不全や甲状腺機能亢進症と関連している場合もあります。
そのため、一般血液検査や甲状腺ホルモン測定など、全身状態を把握するための検査が行われることがあります。

猫の口内炎の治療方法

猫の口内炎には、下記のような治療法が用いられることがあります。

外科治療

外科治療は、主に抜歯手術を指すことが多いようです。
抜歯手術は、主に難治性の口内炎に対して行われることが多く、猫の口腔内の状態を改善し、痛みの軽減を目的としています。

外科治療の選択肢としては、「全臼歯抜歯」と「全顎抜歯」があります。全臼歯抜歯では、前歯と犬歯を残し、前歯と犬歯以外の歯をすべて抜歯します。
一方、全顎抜歯では、口腔内のすべての歯を抜歯します。

全臼歯抜歯や全顎抜歯は、口腔内の細菌量を減少させ、細菌やそのほかの刺激物に対する免疫反応を抑制することにより、炎症の軽減が期待されます。
なかでも、全顎抜歯は、ほかの治療法で改善が見られない重度の口内炎に対して、最終的な治療選択肢として考慮されることがあります。

治療の成功率は、全臼歯抜歯で約60%、全顎抜歯で約80%とされていますが、あくまで目安であり、個々の猫の状態や反応によって異なります。

外科治療は全身麻酔を必要とし、術前には猫の全身状態を評価するための血液検査やX線検査が行われます。
血液検査やX線検査により、麻酔のリスクをできるだけ抑え、手術の安全性を高めることが期待できます。

内科治療

猫の口内炎に対する内科治療は、症状の緩和と根本的な原因への対処を目指します。
症状の緩和と根本的な原因への対処としては、主に薬物療法が用いられ、炎症を抑え、痛みを軽減し、場合によっては感染の拡大を防ぐことが期待できます。

治療には抗菌薬、ステロイド薬、免疫抑制薬、インターフェロン薬などが含まれ、これらの薬は口腔内の細菌量を減少させたり、過剰な免疫反応や炎症を抑制したりするような効果が期待できるとされています。

内科治療は、外科的介入が難しい場合や、外科治療の補助として行われることが多く、猫の全身状態や口内炎の原因に応じて、適切な薬剤が選択されます。
なかでも、症状の原因が明確でない場合や、複数の要因が絡み合っている場合には、総合的なアプローチが求められます。

再生医療

再生医療は、主に間葉系幹細胞を用いた細胞治療が中心となります。
間葉系幹細胞は、強力な抗炎症作用と免疫調節能力により、口内炎の炎症を抑制し、症状の改善を目指します。

再生医療の大きな利点は、従来の治療法では得られなかった症状の改善や、薬剤による副作用のリスクを軽減できる可能性がある点です。
なかでも、外科治療や内科治療で十分な結果が得られなかった場合や、薬剤の副作用に悩まされている猫にとって、選択肢となり得ます。

再生医療は、間葉系幹細胞を猫に投与し、間葉系幹細胞が炎症部位に働きかけて免疫反応を調節し、炎症を抑えることで症状の改善を図る治療です。
再生医療は、口内炎の根本的な原因に対処しようとするものであり、症状の緩和だけでなく、猫の生活の質の向上を目指します。

再生医療はまだ新しい治療法であり、すべての猫に効果が期待できるわけではありませんが、難治性の口内炎を持つ猫にとっては、従来の治療法に加えて検討すべき選択肢です。

猫が口内炎にならないために

猫が口内炎にならないために、下記のことに注意することが大切です。

適切な口腔のケア

猫の口内炎予防には、適切な口腔ケアが重要です。

歯石の蓄積や歯周病は、口内炎の主な原因の一つであり、歯石の蓄積や歯周病を防ぐためには、定期的な歯磨きが大切です。
歯ブラシを使用して歯と歯肉の間の歯垢を除去することで、細菌の増殖を抑え、炎症の予防が期待できます。

しかし、多くの猫は口を触られることを嫌がるため、歯磨きをするのは容易ではありません。
このような場合には、デンタルケア用のおやつやおもちゃを活用することで、遊びながら歯のケアが期待できます。
デンタルケア用のおやつやおもちゃは、噛むことによる物理的な摩擦で歯垢を除去し、歯石の形成を防ぐ効果が期待できます。

さらに、定期的な歯科検診を受けることで、初期の歯周病や歯石の蓄積を発見し、適切な処置ができます。

ワクチンを接種する

猫の口内炎の予防には、ワクチン接種も重要だとされています。
理由は、多くの口内炎が感染症によって引き起こされるためです。

なかでも、「猫カリシウイルス」や「猫ヘルペスウイルス」、さらには「猫白血病ウイルス感染症」など、免疫力を低下させるウイルスが口内炎の主な原因となり得ます。
これらのウイルスによる感染は、猫の口腔内に炎症を引き起こし、結果として口内炎を発症させることがあります。

ワクチン接種によってウイルスに対する免疫を獲得することは、感染症を予防し、結果として口内炎のリスクを減少させる効果が期待できます。
なかでも、外出する機会が多い猫や、ほかの猫との接触が頻繁にある猫では、感染のリスクが高まるため、ワクチンによる予防がさらに重要になります。

しかし、猫白血病ウイルス感染症のワクチン(FELV入りワクチン)はワクチン接種部位肉腫の可能性もあるため、獣医師と十分に相談してください。
定期的なワクチン接種は、猫の免疫システムを強化し、感染症による口内炎の発症を予防できます。

まとめ

ここまで、猫の口内出血をご紹介をしました。
猫の口内出血についてまとめると、以下のとおりです。

  • 猫の口内炎の症状には、口腔内の粘膜に炎症が生じる病気で、赤く腫れた潰瘍や出血、痛み、食欲不振などがあげられる
  • 猫の口内出血とは、口内炎が進行して口腔内の粘膜や歯肉が真っ赤に腫れ上がり、潰瘍やただれが形成されて、出血が起こることがある
  • 猫の口内出血を防ぐためには、適切な口腔内のケアやワクチン接種の併用などがあげられる

なかなか見えづらい口内ですが、定期的なケアで猫の口腔内を守りましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献