犬の歩行困難の原因は?考えられる疾患や対処法を解説

犬の歩行困難の原因は?考えられる疾患や対処法を解説

普段の散歩や自宅で遊んでいるときにケガをしてしまい、歩行困難になってしまうケースがあります。

ケガによって歩けなくなる場合だけではなく、命に関わる重大な疾患が原因で歩行困難を引き起こすこともあります。

重大な疾患の早期発見や治療を行うためにも、歩行困難は重要なサインです。歩行困難の症状で考えられる疾患や検査方法、治療の方法を紹介します。

家族である大切なペットを守っていくために、原因や対処法を知ることが重要です。

犬の歩行困難の原因

柴犬ねる

犬が歩行困難になった場合どのような原因が考えられますか?
犬が歩行困難になる原因として、以下が挙げられます。
  • 運動不足などによる筋力の低下
  • 骨折や脱臼などのケガ
  • 脳や脊髄などの疾患

上記のように、外傷や何らかの疾患が原因の場合があります。歩行困難の症状の場合、命に関わる病気の可能性もあるので注意が必要です。
飼っている犬の歩き方に異変がある場合や、立ち上がれない場合は必要に応じて動物病院の受診を考えましょう。

加齢で歩行困難を起こすことはありますか?
加齢による筋力の低下で今までできていた運動ができなくなり、歩行困難を起こすことがあります。立ち上がることができずに寝たきりの状態になることもあります。
筋力低下を防ぐためには定期的な散歩やトレーニングが必要です。
歩行困難があっても心配がいらないのはどのようなケースですか?
程度によりますが打撲や切り傷、肉球のケガによる歩行困難は緊急性が低く、それほど心配がいらないといえます。散歩中に切り傷や肉球のケガをする場合があります。その際には運動を避け安静にさせましょう。
歩行困難の症状がある場合は、自身で判断するのではなく獣医師への問い合わせや診察が必須です。激しい運動を行いそれによる炎症を起こしている場合も、安静にして炎症が治まるのを待ちましょう。
爪が伸びすぎている場合や筋力低下による歩行困難も心配は少なく、普段からのケアで予防できます。

犬の歩行困難で考えられる疾患

獣医に抱かれたヨークシャーテリア

犬の歩行困難で考えられる脳の疾患にはどのようなものがありますか?
歩行困難の症状が出る脳の疾患は、脳腫瘍・脳炎・先天性の脳疾患があげられます。脳腫瘍には悪性と良性があり、犬の脳腫瘍ではどちらの割合が多いかははっきりしていません。
ただ、犬は人間よりも脳腫瘍の発症率が高いとされています。中高齢の犬が繰り返し痙攣を起こしている場合、脳腫瘍の可能性を疑いましょう。脳腫瘍の治療法としては切除や放射線治療が用いられます。
脳炎は若い小型犬に発症しやすい傾向にあり、ステロイド剤や免疫抑制剤を使用した治療が一般的です。
また、先天性の脳疾患として水頭症があります。元気がない、ぼーっとすることが多い、寝る時間が多いといった症状が出ることが多いです。先天性脳疾患では、生後半年から1年の間に症状が現れやすいです。
犬の歩行困難で考えられる脊椎の疾患を教えてください
歩行困難の症状が現れる脊椎の疾患は7つあり、悪化する恐れもあるため注意が必要です。
  • 椎間板ヘルニア
  • 腫瘍性疾患
  • 外傷性疾患
  • 先天性疾患
  • 脊髄空洞症
  • 尾側頸部脊椎脊髄症
  • 変性性脊髄症
  • 自己免疫疾患

椎間板ヘルニアは頸部から腰部の椎間板に発生します。症状にはグレードがあり、悪化すると歩行困難や身体の麻痺がみられます。
治療としてはグレードが低い場合であれば内科治療、グレードが高い場合では外科手術が必要です。マッサージやリハビリなどの理学療法も有効な手段です。
治療法は腫瘍の性質によって異なり、外科手術と抗がん剤を使った治療が行われます。外傷性疾患は骨折や脱臼などのケガにより発症し、一般的には進行しません。
外傷性疾患の治療法は程度によって異なります。軽度であればリハビリや鎮痛剤の内服、外固定などの処置がとられます。先天性疾患では出生時に異常がみられ、成長とともに良化と悪化を繰り返すことが多いでしょう。
犬種によっては罹患しやすい疾患なので、自身のペットが先天性疾患に罹患しやすいかをあらかじめ確認しておきましょう。骨の形が異常になっているため、手術による整復の治療が行われます。
脊髄空洞症は先天性の疾患の1つで、頸部や体幹部を掻くしぐさや抱かれるのを嫌がるなどの、普段でも見られるような症状が現れます。軽度であれば保存療法、重度であれば外科治療が選択されるでしょう。
尾側頸部脊椎脊髄症はウォブラー症候群ともよばれ、進行性の疾患です。歩行困難や重度の場合であれば立つことができないケースがあります。軽度であればコルセットや内服薬、安静の処置がとられます。重度であれば手術が必要となるでしょう。
変性性脊髄症はゆっくりと時間をかけて進行し、足の甲を擦るような歩き方やうさぎ跳びのような歩き方が特徴です。足を擦って歩くと爪が削れてケガをするので、車いすや靴を使用して足を保護してあげる必要があります。
自己免疫疾患は自分の免疫力が暴走し、ペット自身の細胞を傷つける病気です。治療は生涯必須であり。また皮膚症状が十分に管理出来ていることに加えて副作用や生活の質を考慮しなければいけません。

関節の疾患が原因で犬が歩行困難になることはありますか?
過度な運動や肥満、ケガなどにより関節を痛めると歩行困難になるケースがあります。関節の負担を軽減させるために、過度な運動を避け肥満にならないようにするため食事の管理を行いましょう。
無理に関節を動かしてしまうと悪化の恐れがあるため、安静にさせておく必要があります。
犬の歩行困難で考えられる目や耳の疾患はありますか?
耳のなかにある前庭という部分に障害が起きて歩行困難になることがあります。バランスをつかさどる器官であり、ふらつきや起立障害、眼振などの症状がみられます。
眼振は左右に揺れる水平眼振、上下に動く垂直眼振があり注意が必要な症状です。耳の感染症である内耳炎・外耳炎・中耳炎が疑われるでしょう。抗生物質や抗炎症剤を用いての治療になりますが、原因が腫瘍である場合は手術が必要です。
眼の疾患では、白内障や緑内障などを発症し、眼が見えなくなったりかすんだりすることで歩行困難になるケースがあります。いずれも生活への支障が大きいため、動物病院への受診をおすすめします。

犬の歩行困難の動物病院受診や対処法

バツを出す獣医さん

犬の歩行困難がみられる場合に動物病院で受診する目安を教えてください。
歩行困難の症状が出ている場合は重い病気にかかっている可能性もあるため、基本的にはすぐに動物病院を受診しましょう。
散歩中や遊んでいる際にケガをした場合は少し様子もみてもよいかもしれません。飼い主が不安に思っているのであれば、不安を解消するために受診するのがよいでしょう。
犬の歩行困難がみられる場合どのような検査や治療を行いますか?
犬に歩行困難の症状がみられる場合には、原因を特定するために視診や触診が行われます。視診や触診、診察によって何らかの病気が疑われる場合には、より詳しく調べる検査を行います。
CT・MRI・血液検査・レントゲンでの詳しい検査が行われるでしょう。検査が完了すると、疾患に応じて薬物投与や外科手術、リハビリなどのさまざまな治療法が行われます。
犬の歩行困難がみられる場合に自分でできる対処法はありますか?
ふらつきによりうまく歩くことができず、転倒する恐れがあるためやわらかい床材衝撃を吸収する素材を使用してケガを防ぎましょう。
無理をさせてしまうと悪化する可能性もあるため安静にさせましょう。マッサージやストレッチをしてあげることで症状を軽くすることができますが、疾患によっては悪化してしまう恐れもあるため注意が必要です。
歩行の補助をしてあげたり歩行に対する補助グッズを使用したりすることで、生活にかかるストレスを軽減させることもおすすめです。運動を控えさせるためにケージの利用も効果的でしょう。肥満や筋力低下による歩行困難であれば、日々の生活を見直すことが対処法であり予防にもつながるといえます。

編集部まとめ

愛犬と遊ぶ女性

犬が歩行困難になる原因としては、筋力低下・ケガ・脳や脊椎の疾患が考えられます。疾患によっては命に関わる重大な病気の可能性もあるので注意が必要です。

筋力の低下や爪の伸びすぎ、ケガによる歩行困難はあまり心配がないといえますが、悪化している場合は動物病院を受診しましょう。

脳・脊椎・耳・眼・関節の疾患が原因で歩行困難を起こすこともあり、放置による悪化の恐れがあるため注意が必要です。

歩行困難がみられるときは転倒の恐れがあるため、やわらかい床材や衝撃を吸収する素材を使用しましょう。

筋力低下や爪の伸びすぎ、肥満による歩行困難は毎日のケアや管理を行うことで予防や対処ができます。

歩行困難が起きた際の対処法や日頃のケアをしっかりと行い、大切な家族を守っていきましょう。

参考文献